前回記事のRolling Stoneによるラーズ・ウルリッヒへの長尺インタビュー後編です。映画、音楽、本など話題は多岐に及んでいます。管理人拙訳にてどうぞ。
映画のことになると話が止まらなくなるのは、観ているジャンルは違えどカークとそっくりです(笑)含蓄のある言葉も多いインタビューでした。
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−あなたが生きている上で一番重要なルールとは何ですか?
(笑)俺は一般的に言ってルールで動くヤツじゃない。ずっと前から言っていることだけど、ルールは自分で作るし、望めばいつだってそのルールを破ることができる。俺はそれを守ってきているね。でも俺が何かを遂行していくのには、いつもこのことを思ってきた。言ったらやる。言ったらそういうことだ。それがルールなのか俺のDNAの一部なのか周りの誰かからパクってきたのかさえわからないけどね。
−世界で好きな都市はどこですか?
サンフランシスコ、それに僅差でコペンハーゲンかな。でもサンフランシスコには人生で楽しむすべての要素が詰まっている。それは将来もそうだと思うけど、詳細で歴史的な過去を持っている。俺にとっては、北米で一番ヨーロッパ的な場所だよ。とてもヨーロッパ的な文化的、社会的美学を持っている。水とワインが身近な場所。週末のお出かけにはたくさんの選択肢がある。世界でもっともスマートな人たちがここに住んでいる。ヒッピー運動とかグレイトフル・デッドのような素晴らしい豊かな文化がある。それはニューヨークはLAにはない。俺は仕事でそういった都市とも関わっているけど、そこでは気を休めることはできないんだ。
−あなたはデンマークで育ちました。あなたが一番デンマーク人だなと思うところは何ですか?
俺の広いおでことか?(笑)俺のカミさんは居心地のいい男だと言っているよ。デンマーク語で「hygge」っていう言葉があるんだけど、緩く訳すと「居心地のいい」になる。デンマークの「hygge」なことっていうのは、人を招待してキャンドルを照らしてワインを飲みながら談笑っていう感じ。もう一方で、自分を卑下しているところもある。既成概念を超えるような現状に対する少しばかりの反論も俺にはあるんだ。ちょっと面白いよね。デンマーク人を理解するうえでなくてはならないものだよ。
−ルーカス・グラハムはデンマークで昨今最も有名なミュージシャンとなりました。彼はコペンハーゲンの自由な街、クリスチャニア(Christiania)で育ちました。彼についてはどう思いますか?
俺は彼をフォローしてきたよ。彼らは数ヵ月前にサンフランシスコでライヴをしていたんだけど、俺は他の所用ができて見逃したんだ。でもデンマークの誰かとインタビューをするたびに、いつも彼についてどう思うか尋ねられる(笑)。彼は現在最も海外で成功したデンマーク人だろう。俺たちが一度も会ったことないのによく知っているように感じるよ。でも全てのデンマーク人はどういうわけかお互いに関係を持っている。だから俺は彼のことを知っているように感じるんだろうね(笑)。俺たちのなかの一人って感じでさ。
−あなたが列挙したヒーローのなかにあなたのお父様がいらっしゃいます。どのような人生訓を教えてくれましたか?
特定の原則の要素、規格外で漂うこと。彼の仕事はテニスの世界にあった。50年代・60年代、テニス界はとても保守的だったんだけど、長い髪と髭の男ってことでテニスに異端なものをもたらした者として目立っていたんだ。ほとんど哲学的なアプローチだよ。
−父親であることと音楽的キャリアのバランスについてはどのようにして学んでいったのでしょうか?
俺たちはいくつかの境界線とルールを一定の場所に置いている。このバンドに起きた最善のことは、俺たち全員がほぼ同時期に親になって、同時期にその方向に進んでいったということだよ。率先してね。2人が父親になって、もう2人がろうそくを燃やし続けるってことはなかった。だからメタリカと家族のあいだの優先度という点においては切り替わったんだ。家族と子供たちと伴侶を優先するようになった。勇気をもって俺たちのマネージャーを呼んで何かをするつもりはないとかツア―時には一週間家に戻るとかハッキリと言うところまでには数年かかったよ。内部スケジュールを見ることができたら、誰それの春休みだ、誰それが一週間スキーだ、誰それが休日でお出かけだって具合になっている。俺たちのスケジュールにメタリカを織り込んだってわけ。
−「hygge」の他に何をやってリラックスしていますか?
リラックス?それどういう意味?(笑)俺は映画に情熱を持っている。音楽とかアートとか文学よりも映画を追っかけているよ。夢中なんだ。映画についての記事を読んだり、映画を観たり。映画館にも行くし、家でも映画を観る。オンデマンドでね。公開前の映画素材も入手することもあるし、映画監督を追っかけて彼らが発言したことを読んだりもしている。映画って創造的な過程での最も不可欠な形だと思っているんだ。あれは人が取り組むのに新しい未開の地がある最大の場所だよ。
−最近観たお気に入りの映画は何ですか?
10月と11月は映画にとって最高の2ヶ月で、俺みたいな映画オタクには素晴らしいことがたくさんあるんだ。先週は『La La Land』を観たよ。『Whiplash(セッション)』の監督脚本を手がけたデミアン・チャゼルの次の映画なんだ。12月に公開される。あれはたくさんの人の心を揺さぶるだろうね。素晴らしいよ。ミュージカルなんだ。数日前には『Toni Erdmann』っていうドイツ映画を観た。カンヌで大ヒットした映画でね。あれにはぶっ飛んだよ。ドイツのコメディー映画っていうとても珍しい組み合わせなんだ。レアなジャンルだよね(笑)。また数日前にはブラッド・ピットの制作会社「Plan B」の『Moonlight』って映画を観た。この映画はマイアミで育ったアフリカ系アメリカ人が子供時代に起きた様々なことが描かれている。子供時代、高校時代、大人時代の3段階があるんだ。ファンタスティックな映画だね。それとケン・ローチ監督の『I, Daniel Blake(わたしは、ダニエル・ブレイク)』っていうすごい映画を最近観た。この映画はカンヌ映画祭でパルム・ドール賞を獲得している。イギリスについての、イギリスの社会制度に関する素晴らしい映画だ。とても重たい映画だね。
−どんな音楽があなたを最も感動させるのでしょうか?
自分の人生の体験が埋め込まれているもの。ボブ・マーリーの『Babylon by Bus』は俺の人生でいつでもある種の重要性を持ったレコードにおそらくなるだろうね。あれを聴き始めたのは'78年に出た時だった。あのなかにはデンマークのロスキレ・フェスティバルで録音されたものがある。あれはいつも立ち戻るレコードのなかのひとつに含まれているよ。『Kind Of Blue』みたいなものもある。座ってジャズとか(ジョン)コルトレーンとか(チャーリー)パーカーとかデクスター・ゴードンとかの話をすることができる。もし時系列逆さまにして聴けるレコードをひとつ挙げろと言われれば、『Kind Of Blue』だね。最初に聴いた時と同じくらい素晴らしいサウンドだと思う。(ディープ・パープルの)『Made in Japan(ライヴ・イン・ジャパン)』もそんな風に感じる。初めて聴いたのは1973年で、あのマジックは(今でも)失われていない。(ブラック・サバスの)『Master of Reality』を聴くと、13歳の頃を奇妙な形で思い出す。友だちと自分の部屋で初めてブラック・アフガニスタン(大麻の一種)を吸っていた記憶をね(笑)。それとインドのラーガ音楽を聴くといつも心を揺さぶられるんだ・・・時おり聴くような(ピアニスト)グレン・グールドのピアノみたいな古典的なものの解釈を持っているね。
−子どもの時には何を読んでいましたか?それについてどう思っていたのでしょうか?
親父とアメリカに旅行した1976年に『Mad』って雑誌を教えられた。あれにはたくさんのアメリカ文化が紹介されていたんだ。俺がいつもアウトサイダーであること、自主的あること、メインストリームにはやや皮肉っているところ、そういったものは『Mad』がもたらしたことだ。
子どもの頃だったら他には『Tintin』『Asterix』『Lucky Luke』っていうヨーロッパのコミック本。でもあれは雑誌というよりは本の形式だった。全てに共通していたのは、全部冒険的で、奇妙な珍しい状況に身を置いて、独創的でどうにかして何かを起こしてやろうと考えていたってところだね。
−今は何を読んでいるんですか?
2週間前にスプリングスティーンの本をダウンロードしたよ。『Rolling Stone』や『Vanity Fair』での話も読んで、(テレビ番組)『60 Minutes』も見て、チェックするべきだと思ったんだ。彼の書きっぷりは大好きだよ。彼の書く歌詞みたいでさ。信じられないくらい詩的なんだ。自身のうつ病に関してのオープンなやり方が気に入っているよ。
※訳注:ブルース・スプリングスティーンは最近出した自伝『Born To Run(ボーン・トゥ・ラン)』のなかで自らがうつ病だったことを告白している
−あなた自身の回顧録を書くことは考えませんでしたか?
それについては時おり考えるけど、それは差し迫ったものじゃないね。誰かによって書かれた本を読むと、特に知っている人が書いている人のだと「ちょっと待ってくれ、そんなことは全然起きてない」とか「それはもうちょっと18禁なことが起きてたよ」なんてことが読んでいて何回もある。俺はいつもそういう類のことで難しいと感じるよ。自分のこととなると、デンマークの部分なんかでそういうことがあったとしたら本当のことを書かなきゃならないからね。そして本当のことを書こうものなら、周りの人たちが外に出したくないかもしれないことがそこに含まれているかもしれない。
もし自分のことを書いていたら、レベルを下げたものにしたくないと思っているけど、同時に、もし1988年のあれとこれについて何かやって、俺たちがこのクレイジーな冒険を一緒にやってきたとすると、俺はその人がその話をされたがっているのは当然だと思うべきじゃないんだ。ちょっとしたソーシャルメディアみたいなもんだね。「あの人はその写真を掲載してもいいってことを了解しているの?」(笑)それは他人のプライバシーや選択肢を尊重するということなんだ。まぁ俺は300ページのクレイジーなお話になると言っているわけじゃない。他の誰かが共有して欲しくないと思っていることを言っていないかいつも心配しているから、(回顧録を)書けるとは思っていないって言っているだけなんだ。これは俺の親父から得た原則だよ。
−あなたが一番ムダ使いした買い物は何でしたか?
俺の人生にはいろんな期間がある。それほど最近のことじゃないけど、服にたくさんのお金を費やしていた。スーツに3000ドル費やして、2年後にタンスの肥やしになっているのを見るんだ。「クソッ、これは俺が自分で買ったものじゃないか。1回も着てないぞ。まだタグもついているじゃないか。」なんてことがある。ありがたいことにもうそんなことは起きていないけどね。
−若き日の自分にどんなアドバイスをしますか?
「ゆっくりやれ。全てを受け入れろ。そんなに急がないで起きていることに感謝しろ」デイヴ・グロールが言っているのと真逆だね。「やり遂げたら次だ」ってね(訳注:フー・ファイターズの曲「All My Life」の一節「Done, Done and I'm onto the next one」のこと)。80年代・90年代に俺が一度も取り入れなかったたくさんの経験があった。91年にソビエト連邦崩壊の真っ只中のロシアにいた。もう少し目を開けていたらって思うよ。俺の周りで起こっていたことを思い出せないからね。後悔はしていないけど、今日ではちょっと立ち止まって「うわぁこいつはかなりクレイジーだ」って感じで全てを受け入れることができるんだ。
RollingStone(2016-11-06)
映画のことになると話が止まらなくなるのは、観ているジャンルは違えどカークとそっくりです(笑)含蓄のある言葉も多いインタビューでした。
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