Newsweekのインタビューでラーズ・ウルリッヒが「Worldwired Tour」の演出やレディー・ガガ、自らのルーツからテニスまで語っていました。長編インタビューを管理人拙訳にてご紹介。
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−長年に渡ってメタリカは、グレイトフル・デッドと変わらないくらい頻繁にツアーを行うバンドとして評判を得ていますね。
アルバムを出して多くのツアーをするだけじゃなく、アルバムを出していない時でもツアーをやっている。ツアーは俺たちにとって間違いなく大切なものだ。ロックンロール・サーカスから抜け出すためにね。ますます今、インフラや演出に関しては世界の片隅まで広がってきている。だからさらにライヴができる場所、訪問できる国は増えてきている。
自分たちのショー、フェスティバルも行うことができる。俺たちは悪くない方法というのを見つけ出した。2週間単位でツアーを行うことで、決して2週間以上家を離れるようなことはしないし、誰も自制心を失ったりしない。漆黒の深淵に堕ちていくリスクを最小限に抑えるんだ。俺たちは何とか機能し、バランスの取れたダイナミクスを得た。俺たちにとって効果的なんだ。俺にとってはツアーに出て、一日のなかでステージ上での2時間が一番安全だと思う。俺を邪魔するヤツは誰もいないからね。自分の船の船長でいられて、世界で一番最高なのがステージ上の2時間なんだ。
−メタリカは2013年に南極大陸で公演を行いました。あのショーについて特にクールだったことは何ですか?
冒険の感覚っていうのはいつもメタリカの奥底に流れている。俺が言ってきたように、ここ数年で多くの素晴らしい場所でライヴをしてきた。ついには中国、マレーシア、インドネシアまで行った。エクアドル、コスタリカ、パナマ、アブダビといった中南米の新しいフロンティアでもやった。数年前に誰かが俺たちに電話をかけて、南極にあるチリの研究基地で公演することをまとめているって言うんだ。彼らはあるコンテストの勝者のためにバンドに来てほしかったのさ。それで俺たちは「OK。俺たちはそこに行こう、日時を指定したら飛んでいくよ」と答えたんだ。
素晴らしい3日間だったよ。俺たちはみんな研究に使っていると思われる大きな砕氷船に乗った。聴衆となる人たちと一緒に過ごしたんだ。美しい港に陸付けされたこの砕氷船から、俺たちは上陸してテントを設置した。そこにはずっと群衆が集まっていた。音響増幅装置がヘッドホンのみのサイレント・ディスコ・スタイルで俺たちは南極公演をやったんだ。だから絶滅危惧種に対する騒音問題は無し。ハッピーな400人のコンテスト当選者とハッピーなバンドがいたってわけだな。
全てが一緒になった瞬間のひとつだった。あのテントでの素晴らしい感覚は世界の何物も変えられないよ。
−WorldWiredツアーであなた方は大量のパイロを使っていますね。
あれを動かしている人たちは間違いなく高度に訓練された人間だ。素晴らしいよ、本当に。
−ショーの終わりの巨大花火を含むパイロの演出は間違いなく大きなスタジアムのショーで効果的でした。でもメタリカは小さいアットホームなクラブでのショーを行うことでも知られています。各々に対してどうお考えですか?
サッカースタジアムみたいな大きなところでライヴをする時、穏やかな高揚感を与えられる。(逆に)親密な雰囲気を創り出すのは難しいから、いくつか舞台装置を加えてみるんだ。大勢になればなるほど、舞台装置は良くなっていく。ライヴ会場が小さいほど、より音楽に頼ることができる。でも舞台装置が重要なのは、7万5000人を前に演奏している時なんだよ。自分たちの近くにいない人たちでも誰もが注視するものを提供できるからね。できるだけたくさん親密な雰囲気を創り出そうとしている。時には爆発するものだとか、炎だとか、そういうものはいつだって効果的だ。
−「Master Of Puppets」の時にショーがさらに創造的になりますよね、マリオネットを操る糸があなたやドラムキットに伸びているのを観られて最高でした!
俺たちはショーの制作を手助けしてくれるヤツらととても緊密に仕事をしている。曲のテーマ、アルバムのテーマを表現できるようにするんだ。できる限り一番クールなものを考え出すってことだね。どんなスタジアムの上層部でも超越するだけじゃなく、創造的価値のある要素を加えることの役に立つ。他のバンドがやっているのと同じショーはやりたくないから、他の仲間がやってることに目を離したくない。自分自身のものを考え出したいと思ってる。
−スタジアムでのビデオスクリーンによる表現は壮大ですね。
正しいバランスを見つけようとしているんだ。間違いなく大きなスクリーンによって、遠くにいる人たちにも親密感を持ってもらえることは素晴らしい。でも同時にそれに頼ろうとはしていない。明らかにテクノロジーはより新しい創造的なものが可能な領域にまで進んでいる。それはエキサイティングなことだ。創造的な過程というのは曲やアルバムを作ることだけで終わるわけじゃない。どうやってアルバムを売るか、どうやってアルバムを共有するか、どうやってショーをするかまで含んでいる。そして創造的な体験を増やしてきているんだ。
−80年代初頭、メタリカはニュージャージーのオールド・ブリッジを拠点にしていたメガフォース・レコードで2枚のアルバムをレコーディングしました。あなた方はメガフォースのオーナーと一緒に住んでいました。5月に行ったメットライフ・スタジアムで、メタリカはオールド・ブリッジのルーツに感謝して「Seek & Destroy」を観衆の中で演奏できるよう舞台を設置(訳注:スネイクピットの先端にドラムを用意して4人で演奏)しましたね。
まぁ35年、俺たちがやろうとしている主なことと言えば、どんな状況にあっても聴衆とつながるってことなんだ。屋内で演奏する時、過去25年間で、真ん中とか「円」の中でやってきた(訳注:スネイク・ピット、観衆をステージ後ろに入れた試みやラウンドステージ)。スタジアムでライヴをする時、(通常は)真ん中じゃなくて片側で演奏することになる。だから(観衆を周りに置くステージセットによって)できるだけ近くに多くのファンの顔が見えるようにする試みだったんだ。
−あなたのドラムについて少しお話ししましょう。振り返ってみて、あなたに影響を与えたドラマーは誰ですか?
70年代初頭をデンマークのコペンハーゲンで育ったから、影響を受けて触発されたバンドのほとんどはディープ・パープルやブラック・サバス、ユーライア・ヒープ、ステイタス・クォーといったイギリスのバンドだった。もう少し後になると、アイアン。メイデン、モーターヘッド、ジューダス・プリーストのような、よりハードなロックやヘヴィメタルのバンドに夢中になっていった。こういったバンドたちで育ったようなもんだね。俺にとってはドラムに関するインスピレーションは主にディープ・パープルのイアン・ペイス、AC/DCのフィル・ラッドの2人だった。イアン・ペイスのテクニックと狂気のエネルギーが大好きなんだ。それからフィル・ラッドの勢いとグルーヴとシンプルさ、最小限のアプローチでクレイジーにスウィングする様が大好きなんだよね。
−『Hardwired...To Self-Destruct』は他のメタリカのアルバムとどう違うと思いますか?
俺にとってここで知的で詳細な説明をするのは難しいことだね。その前の『Death Magnetic』では、収録曲は特定の領域ではかなり長くとても内省的だった。今回のアルバムはもう少し簡潔でタイトで絞ったものになっている。ところどころでシンプルだし、雰囲気とかグルーヴとか活気みたいなものに頼っているところがあると思う。グレッグ・フィデルマンが俺たちと一緒にこのアルバムをプロデュースした。彼は過去10年間でレコーディングに関する全てについて主たる頼りになる人物になっていた。彼が最終的にこのニューアルバムの音質や全体的にどう聴こえるかに関してまとめたと思う。このアルバムは驚くほど良く受け取られている。みんな温かく包み込むような形で受け取ってくれた。ちょっと驚いたし、圧倒されたよ。だから今はメタリカでいるには素晴らしい時期だね。
−もうひとつの重要なメタリカのアルバムは“ブラックアルバム”です。このツアーでは「Wherever I May Roam」のような大きくうねるようなリフと劇的なトーンを含む多くの曲が、大きなスタジアムのライヴに良く合っていると気付きました。
一般的に、ここで白黒つけすぎることなく言えば、よりシンプルな曲は大きな場所でより良く演奏される傾向にある。だからよりブログレッシヴなものとか、内省的なものが7万5000人を前にしたスタジアムでプレイする時には失われてしまう。だから俺たちはセットリストではもうちょっと冒険的な傾向にある。もっと小さいところでやる時にはレアな曲とかやったりするけどね。スタジアムでライヴをする時には、慎重に言葉を選ぶと、いわゆるヒット曲とか足でリズムを取りたくなるような曲の方に広げたいと思うものなんだ。
−「Moth Into Flame」はヒット曲のひとつです。今年のグラミー賞ではマイクの問題でジェイムズのボーカルが邪魔されてしまいましたが、それでもレディー・ガガと共演したメタリカのパフォーマンスは素晴らしかったと思います。
ありがとう。そう、彼女はすごいね。ロックの精神、ロックのDNAを持っている。すんなりとうまくいったよ。彼女はとても気力に満ちていて、とても熱心で、本当の創造的要素をこのプロジェクトにもたらしてくれた。彼女は素晴らしい5人目のメンバーだったし、彼女の声とジェイムズの声はよく合っていたし、調和していたと思う。本当にクールだったよ。
−あなたとベーシストのロバート・トゥルージロがリズムセクションを務めています。彼の演奏について特筆すべきことは何ですか?
彼がバンドにもたらしているものだよ。彼はバンド内でも信じられないほど素晴らしい魂を持ち合わせている。周りで感じる雰囲気、エネルギーはとても安定しているし、いつも落ち着いていて自信に満ちているんだ。才能あるミュージシャンの先を行っているけど、周りには心地よく飄々とした雰囲気がある。いつも気力が溢れていて素晴らしいと思う。今や彼はこのバンドに14年間いるんだ。ただただすごいね。
−このツアーでは「Anesthesia (Pulling Teeth)」の演奏の際、クリフ・バートンの姿をスクリーンに映してトリビュートを捧げていますね。
クリフはいつだってバンドの一員だし、彼の魂はいつも俺たちと共にある。このバンドを構成する不可欠な部分なんだ。だから俺は彼の向いていた方向に感謝を捧げるのは価値があることだと思うし、彼が認めてくれることが俺たちにとって大切なことなんだ。ファンは俺たちの送った考えを認めてくれると思う。もう俺たちと一緒にはいられないブラザーに感謝を捧げて欲しくないとは思わないだろ。
−WorldWiredツアーでは、「Disposable Heroes」「Battery」「One」などの曲に付随するビジュアルの一部に戦争に関連するものがスクリーンに表示されますが、あれらの曲にはもっと多くの含みがあるのでしょうか?
俺は戦争を扱っているとは言わない。もっと個人的なものだ。
−個人的な葛藤?
そう。不安、恐怖、戦争のような状況にある背景が設定だ。だから無力感とか死の要素、自分の力と潜在的な死の問題とか、自信と葛藤を扱っている。曲の多くはある特定の心の状態について書かれているわけ。
−このツアーのあなた方のショーでは「The Ecstasy of Gold」をバックに『The Good, the Bad and the Ugly(続・夕陽のガンマン)』の映像から始まります。メタリカは80年代初めからそうしてきていますね。
そう。俺たちはこれを35年間続けてきた。俺たちの昔のマネージャー、ジョニー・ザズーラまで戻らないと。彼がエンニオ・モリコーネの作品が壮大でピッタリだと思ったんだ。そうして俺たちと共に代名詞となったんだよ。
−メタリカは2011年の『Lulu』でルー・リードと共作しました。彼からは何を学びましたか?
ルーはいろんなことを吸収したいと思わせる信じられないほどすごいキャラクターのひとりだった。俺は彼の周りにいてスポンジになりたいと思ったね。素晴らしいアーティストだったし、瞬間を捉えること、衝動性、自分を信じること、たった今やったことが十分良いものだと信じることについて多くのことを俺たちに教えてくれた。やったことそれ自身が全てのクオリティーを持っているんだってことだね。もっと良くしようと改善しようとするんじゃなく、(同じものを)繰り返すことは二度とできないということだ。完璧というものはないんだと。その世界観にほとんど一年中いたことで魅了された。彼を喪って本当に寂しいよ。彼と共に創造的にアルバムを制作し、TV番組にも出られたことは信じられないほど素晴らしい経験だった。
−もうひとつメタリカの物語のなかで面白い章として挙げられるのは、1999年にサンフランシスコ交響楽団と共演し、その結果が『S&M』となりました。あのショーはどうだったと思いますか?
オリジナルでクリエイティブな挑戦とか未知の創造的な領域みたいな仕事をするチャンスを得るっていうのは、いつだって超エキサイティングだね。(指揮者の)マイケル・ケイメンがやってきて、俺たちが交響楽団と演奏することやその他もろもろを提案してくれた。彼がこのプロジェクトを推し進めていたんだ。マイケルは人に伝わるほどの素晴らしい熱意を持っていたし、このプロジェクトの陣頭指揮を見事に果たしてくれた。俺たちはヨーロッパ、ニューヨーク、サンフランシスコとそれぞれ異なる交響楽団と6回だか8回のコンサートをやったんだ。
−お気に入りのメタリカのアルバムはありますか?
最新アルバムを選ぶね。だから今は『Hardwired...To Self-Destruct』だと言うことに何の疑いもないよ。
−長くかかった2枚組アルバムでしたね。
みんながそういう風に見ているかさえわからないんだ。俺たちは3か月ごとにアルバムを作るわけじゃない。みんなにとって、より長い時間没頭するに十分なものがあるとすればクールなことだよ。曲があって、素材があって、それが良いものだと感じて、そこからやってみようと決めたわけだから。
−メタリカ結成前、あなたは優れたテニスプレイヤーでした。テニスはまだやっているんですか?
それほどテニスはやっていないんだ。訊いてくれてありがとう。時々はするけど、ひどいもんだよ。たまに友だち数人とちょっとやるくらいだね。
−WorldWiredのショーについてもうひとつ質問です。(終演後)観客がコンサートから帰る時、あなた方はコンサート前の観衆からランダムなシーンを切り出して面白い動画として(スクリーンに)写していますね。
そう。その日の俺たちからの感謝みたいなもんだね。どんな街にいても、俺たちには動画というかファンへの感謝としてまとめるクルーがいるんだ。基本的にはエンディング、エンド・クレジットとして「来てくれてありがとう、大きな画面であなたが見えるよ」って具合にね。
Newsweek(2017-06-29)
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コメント
イヤ、それよりも海外に行く方が早いか…
アジアツアーとは違った演出が増えているようなので早くこの目で観たいですね
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