カーク・ハメットは『Hardwired...To Self-Destruct』のソング・ライティングに参加していないということもあってか、B!誌にもインタビューが掲載されず、どういうスタンスでレコーディングに臨んだのか気になっていました。オンライン版「So What!」でその気になるところについて語ってくれています。ジェイムズ同様、「So What!」の編集長、ステファン・チラジとの会話を管理人拙訳にてご紹介。

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ステファン・チラジ
「Lords of Summer」が作曲された時期やニューアルバムについて最初に演奏されたのはどの時点だったと思う?ニューアルバムの制作過程はいつ始まったんだろう?

カーク・ハメット
ヨーロッパツアーに出ようとしている時かな。知っての通り、俺が最初に「Lords of Summer」を聴いた時、リフに関しては『Death Magnetic』のようなものじゃなかった。あれはリフによって始まったんじゃなくて、曲のパーツや本当にすごいメロディーによって始まったものだったんだ。だから俺たちにとっては別の曲という感じだった。でもその時点での俺にとっては、レコーディング過程のどこに俺たちがいるのか、曲の方向性はどこに向かおうとしているのか、とかそういうことは測りようがなかったね。まだプロセス全体の初期段階だったから。

ステファン
ボクはこのアルバムは、2人が大胆に先導し、もう2人が自分たちの要素を盛り込んだという点で25年ぶりのものだと思うんだけど。

カーク
そうだね。

ステファン
キミがロブのいなかった数世代を経験してきたということを考えると、その(今回のアルバム制作)過程をキミの視点から聴くのは良いことだと思うんだ。既に・・・以前からバンドにいてそのバンド力学がどのように機能してきたかを観ているわけで。だからこれまで長きに渡ってやってきたものよりも自由にやっているように見える今回のアルバムでキミがどう関わったのか話してもらおうか。

カーク
まぁ当初はアルバムを作るというのは、似たアプローチ、つまり『Kill 'Em All』のような考えだと思ったんだ。あれはラーズとジェイムズによって、ムステインの助けを少し借りて、かなりの部分が決められたアルバムだった。『Kill 'Em All』でやったのとほぼ同じように全ての創造的なプロセスを2人が再び陣頭指揮を執るというコンセプトだね。俺はそれで全く問題ないよ。俺たちはみんな自分たちのやり方で貢献しているし、みんなが趣やスタイルやエッセンスを持ち込んでいるし、俺が思うにそういう構成要素がメタリカを「Metallica」たらしめている重要なパーツなんだ。俺がここにいるのはリードギターを弾くため。『Kill 'Em All』で、俺はかなり前に出て、ギターソロは従来どう始めたかということから着手したんだ。はじめの4小節・8小節は普段よく弾いているように弾いて、残りの部分を即興で演奏する。すでにあったものと同じ方向に沿ってちょっと足したところもあれば、別の方向に進んでまるっきり違うものを演奏したところもある。『Kill 'Em All』はそういうごちゃまぜだったんだよ。

そうは言っても、自分の経験を思い出してみると、ギターソロにあらかじめ取りかからなくてもよかったと思っていたんだ。音楽やギターの演奏をやらなくちゃならないって時には充分に準備しておきたいと思う方だから(あらかじめギターソロを準備しないことは)かなり大胆なことだし、本当に能力が試されることなんだけどね。自分のパートだとわかるところで、それを完璧にこなして、必要とあらば自然に出てくる音楽を考え出すことができるようになりたい。これは俺の場合だけどね。充分に準備しているものを見せる、それが『Kill ‘Em All』後、全てのアルバムにおける俺のやり方だった。『Ride the Lightning』にしてもそうだし・・・俺はいまだに自分の全てのソロを書いたソロ・ノートを持っているんだ。


今度こそはって自分に言い聞かせていた。過去にそういうものをたくさんやってきて、結局アルバムに収録されたものは俺が最初に弾いたものだったんだ。本当に最初のものだよ。自分の潜在意識が最も適切なものは何かという感覚を持っている感じ。実際にそれについて考えるところから始めると、そのプロセスは四角いレンガを丸い穴に押し込もうとするのに似ているね。ただ音楽の流れ、創造性の流れ、感覚の流れのままにというよりむしろコンセプトを考えてそれを機能させるよう楽曲のために必要とされるものを潜在意識に指示させるんだ。俺はそのコンセプト100%をこれらのソロをやるアプローチに入れた。だから基本的にすべての楽曲が仕上がって、バッキングトラックが完成して、みんながそこにソロがあるとわかるところで俺は何かをプレイするだけだった。そこで何が起きているのかを知るだけの「充填剤」みたいなものだね。だから俺はギターソロを始めるためにスタジオ入りした最初の日には、踏み切り板があって、どうやってソロを始めようか、うっすら考えがあった。俺がスタジオ入りする前夜にだけそうした。2,3日前はやらなかった。あらかじめ考えておくということはしたくなかったんでね。その瞬間を捉えて100%自然発生的に、出てくるのは何でも捉えてできるだけ即興で弾きたいと思ったんだ。だから基本的には俺がスタジオにやってきて、(プロデューサーの)グレッグが(ソロを収録する)楽曲を用意して、俺が「OK、レコーディング開始だ」と言って弾くだけだった。

スタファン
ソロを入れる前にリフや楽曲のメインの箇所は何回聴いたの?

カーク
まぁどんなキーなのかを把握していたよ。どのスケールを弾けるのかがわかる。FシャープならFシャープのペンタトニックを弾けるとわかるからね・・・

ステファン
でもリフにも反応するわけでしょ?

カーク
そうそうそう。楽曲の感覚や脈動に反応するんだ。

ステファン
だからキミにとってはとてもライヴなプロセスだった。

カーク
とってもライヴで、瞬間を捉えた、100%自然発生的で、頭の奥の潜在的なもの全てが前面に出てる。このレコーディング過程で自分が準備したのは、家に帰って、テクニックを磨いて、敏捷性、コントロール、スピード、フレーズに関して自分の演奏能力がピークになっているかを確かめることだけだった。俺はその時点で自分の能力をトップまで持っていけたと思う。こういうことを把握してからソロに臨むと、これまでやったことないものでも自分はできるという自信をみなぎらせることができたんだ。

ステファン
じゃあ制作過程ではより自信をもって臨んだってことかな?過去には自信と戦ってきたと思うんだけど、今回は家にいるような感じで演奏がとても自信をもって聴こえると?

カーク
うん、まぁ俺にとってコンセプト自体がチャレンジングなものだったし、強迫的で、いつもポケットに「弾薬」を持っておく必要があるものだったんだ。強迫的にならないことも挑戦だった。(あらかじめソロを考えないやり方は)自分の能力を信じるように強制されるんだ。過去やってきたことに自信を持って、将来またやり直せると自信を持つことを迫られる。だから実際問題、強迫神経症のスイッチをオフにする必要があった。基本的には楽曲に対していちかばちかやってみることを強制されるわけなんだ。

ステファン
それはいつも心地よいものじゃなかったと・・

カーク
そう、本当に心地いいものじゃない。同じ話になるけど、俺はいつもしっかりした良い基盤があってから、たくさんのアイデアを提示しているからね。一番の悪夢は「俺は何をやろうとしてるんだ?何を弾こうとしてるんだ?」ってなって、ただ何時間も「なんやかんや」と経ってしまうことだろうね。それが俺にとって最大の恐怖だよ。なぜそんなことを恐れるのかわからない。だってそんなことは絶対に決していつだって俺には起きないんだから。でもそれが俺の持っている真の恐怖なんだ。(以前より自信を持ったことは)自分の演奏が最近良くなったと思う事実とも関係している。全体的に自分のギター演奏がまた繋がってきていると感じるんだ。とても良い感じだよ。

Metallica.com(2016-11-23)

続きはまた後日。

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