Billboard.comのインタビューでラーズ・ウルリッヒが『Kill 'Em All』『Ride The Lightning』のリマスターデラックスボックスセット、そして新譜の制作状況について語っています。管理人拙訳にてご紹介。

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−『Kill 'Em All』と『Ride the Lightning』のボックスセットには、音楽、写真、ビデオとたくさんの素材があります。何年も後になって、草創期の歴史を振り返ってどう感じましたか?

ひとつ感じたのは、うわぁ、俺たちかなりメチャクチャな過去だったな!ってことだ。バンド初期の頃はいろんな別の場所でいろんな別のレコード会社とやりとりをしていたからね。『Kill 'Em All』が出た時は、たしか、10の異なる国で10の異なるレコード・レーベルで出していた。全部、自分たちでやっていたからね。『Ride the Lightning』はアメリカだけで2つのレーベルでリリースしたんだ。全てにおいて混沌とした空気みたいなものがあったよ。このボックスセットについて、全てのコトを済ました後でさえ、みつからないテープやら何やらがまだあるし。実際、俺たちのためにこの数年働いてくれたヤツの唯一の仕事は、こういったもろもろを捜し出すってことだった。まだ全てのパーツはみつかってない。まぁそうは言っても、それだけの価値があるパッケージをどうにか集めようとしていたんだ。

−今回のボックスセットで興味深いことのひとつは、これまで聴いたことのない楽曲が無きに等しいということです。

まぁ、(今までに出した)2つのレコードについてのものだから。まさにメタリカの歴史のほとんど、つまり俺たちがろくに曲も書いたこともなければ、リリースするような何かを作ったこともなかった時のレコードだ。俺たちはいつも時間のムダのようなものだと思ってた。何で出せもしない曲を書いて、レコーディングするんだ?だから誰も聴いたことのない『Kill 'Em All』から余った4曲と『Ride The Lightning』からさらに3曲があるって類のものじゃない。基本的に『Kill 'Em All』は俺たちが書いてレコーディングした最初の10曲だし、『Ride The Lightning』はその次に作った8曲だ。そういうこと。俺たちはいつもそんな感じで順番通りそのまんまだったってわけ。

−あなた方はニューヨークのロチェスターのスタジオで2週間でざっと『Kill 'Em All』をレコーディングしました。(レコーディング時の)セッションについて何か思い出すことはありますか?

あれはかなりの低予算だった。俺たちはエンジニアのひとりの家にみんな寝泊まりしていた。俺が思うにあの環境はかなりのスパルタ方式だったね。スタジオといっても基本的には、大きくて何もないスペースのある古い倉庫だった。全部で3階か4階建てで、ドラムセットは最上階にセッティングした。それから下に階段を5段も降りれば、コントロールルームに到着するって具合だ。でも俺たちはロチェスターであのスタジオに入って、レコード制作をしたんだ、わかる?興奮したね。食べるために何かするとか、自分の洗濯物を洗うとかそういったことを考えもしなかった19歳だ。ただ音楽をやりたかった。他の全てのことは、気にも留めちゃいない。ただたださっさとやっちまいたかったのさ。

−『Kill 'Em All』のボックスセットにはアルバム収録曲のいくつかでデモバージョンではなく、ラフミックスがありますね。

『Kill 'Em All』の曲のほとんどは、(1982年のデモ)『No Life 'Til Leather』よりも早くにレコーディングされていたし、リリースしていたんだ。実際、『No Life 'Til Leather』を最初に出そうと話していたんだけど、遅らせるような実務上のことがいくつかあったから、俺たちは『Kill 'Em All』に真っすぐ向かっていったんだ。俺たちは昨年のレコードストアデイであのデモテープのカセットをリリースした。でもうまくいけば、いつかあれにまつわる全セットを出す機会が得られると思う。時期は未定だけど、今は『Kill 'Em All』から始めて、最後にそれをやるかもしれない。でも『Kill 'Em All』のボックスセットで聴けるほとんどは「Hit The Lights」「Motorbreath」の別バージョンみたいなもので、レコーディング・セッションからの違うミックスのものなんだ。それから「Seek And Destory」「Phantom Lord」のいわゆるライヴバージョンもある。これは本当は(サンフランシスコのレコーディングスタジオ)オートマット(Automatt)でやったものなんだ。本当はライヴじゃない有名なライヴバージョンってわけ!


−『Ride The Lightning』ボックスセットにはガレージデモとして認識されているいくつかの曲がありますね。あれはどこでレコーディングされたんですか?

あれは実際にガレージでやったもので、当時俺たちがいた家の裏だね。俺たちが初めて(ロサンゼルスからサンフランシスコにやってきた時、バークレーのすぐ隣の郊外、エルサリートに落ち着いた。ジェイムズと俺がマーク・ウィテカーってヤツとそこに住んでいた。彼は俺たちの最初の頃のマネージャーだった。そこが俺たちが曲を書いてリハーサルをする場所だった。ガレージには防音を仕込んだ。卵が入ってたパックを壁に貼り付けて、床にカーペットを敷いてといった具合にね。『Ride The Lightning』と『Master Of Puppets』の曲のほとんどはそこで書いて取り組んだものなんだ。

−『Ride The Lightning』はデンマーク・コペンハーゲンのスウィート・サイレンス・スタジオできちんとレコーディングしていました。ニューヨーク州北部の倉庫よりもかなり違った体験だったと想像しますが。

もちろん。それまでに自由になるお金が少しはあったからね。それにスウィート・サイレンスは、俺たちが最初にレコーディングした場所みたいに冒涜するようなことを何も言うことはなかった。リッチー・ブラックモアとかクイーンとかレインボーのような人たちが使っていたもっと国際的なスタジオだったんだ。施設面でも別物だったよ。だから俺たちは『Kill 'Em All』で使った場所よりもう少し上等になったかもしれないああいう場所にいられるなんてとても興奮したんだ。

−あなたはコペンハーゲンと明らかに繋がりを持っています。あの街で生まれ育ったわけですからね。でもなぜバンドはあの場所でレコーディングすることを選んだんでしょうか?

俺たちはヨーロッパに滞在してツアーをできるように、ヨーロッパでレコーディングしていた。1984年春の大半は、ライヴをやってコペンハーゲンを行ったり来たりだった。ヨーロッパ中を廻ってライヴをやって、コペンハーゲンに行ってレコーディングして、またライヴをやって、また戻ってレコーディングだ。そんなわけだ。

−当時の素晴らしいライヴが『Kill 'Em All』ボックスセットに収録されていますね。1984年2月9日、パリのエスパス・バラード(Espace Ballard)。ちょうど『Ride The Lightning』をレコーディングする準備をしていたバンドとしてのヨーロッパのショーのひとつが収められています。あのライヴは「Seven Dates in Hell」ツアーの一部でもあるわけですが、ヴェノムの前座だったんですよね?

そう。あれはヨーロッパで初めてのツアーだった。あのツアーは俺たちが毎回かなりの観客を前に初めて演った時だったんだ。数百人を前にじゃなくて数千人を前にね。ヨーロッパの観客はとても情熱的だったよ。おそらくアメリカの観客に比べてもうちょっとメタリカが何をやっているのかを知っていたんだろう。あれはジェイムズがフロントマンとしてもう少し安定して自信をつけ始めた時だったとも思う。だからエキサイティングな時間だったよ。ヴェノムの前座として一夜に3、4、5千人を前に演るんだ。それでつるんでは、全ヨーロッパのハードロックシーンを楽しむチャンスを掴んでいた。

−多くのインタビューが2つのボックスセットに散りばめられていますが、『Ride The Lightning』のボックスセットに収録されたひとつには「ラーズ・ウルリッヒ、あの時、彼は若かった」と題されています。あれについて何か教えてもらえますか?

あれはコペンハーゲンでの『Ride the Lightning』のレコーディング・セッションから収録された。俺が受けた初めてのテレビインタビューだ。いやらしい口ひげから何から、まだ家にいるまんまのように見えるね(笑)。あれはこれまであまり見られてこなかったもののひとつだ。でもシェアするのは楽しいね。

−最後にこれを聞いておかないと我々が仕事をサボったように思われます。今度のメタリカの新しいアルバムはどんな具合ですか?

まぁ尋ねてくれてありがとう!俺たちは着実に前進しているよ!すぐにそれに没頭することになるだろうね。何か劇的なことが起きない限り、2016年に出せないと信じるのは俺にとっては難しいことだね。それが俺たちがやってることだ。でも間違いなく、今俺たちがやっているやり方は、『Kill 'Em All』や『Ride The Lightning』の頃に俺たちがやっていたやり方よりもずっと難しい。今や、俺たちはたくさんの様々なことをやりたいもんだからね。曲も書きたいし、レコーディングもしたい。でもレコードストアデイ大使もやりたいし、デラックス・リマスター盤も出したいし、ラスプーチン・ミュージックやAT&Tパークに行ってライヴをやりたいし、その他もろもろのことをやってみたい。だから、曲を書くこと、レコーディングをすることは、今や他を優先してある何かというよりも大きな絵図の一部分みたいなものなんだ。それを結局やる段になれば、ニューアルバムは前のもの(2008年の『Death Magnetic』)よりも早く曲を書いてレコーディングしていたかもしれない。これだけ長い期間に渡って伸びていったのは、レコーディングにおけるこういったギャップによるものだ。それは結構なことだよ。俺はそれについて何も文句はない。それで俺たちは今うまくいっているんだ。でもいずれにせよレコードは、間違いなく前進している。完成に近づいている。すぐにでも終わらせる必要がある・・・できればね(笑)はい、おしまい!


Billboard(2016-04-11)

ボックスセットのメイキングとして、「Fight Fire With Fire (Garage Demo)」の制作風景動画がアップされています。


instagramでも。
https://www.instagram.com/p/BEERZoiyS3_/

Soundcloudの方でも新たに音源が追加公開されています。
https://soundcloud.com/officialmetallica

ちなみにリマスターデラックスボックスセットの国内輸入仕様は、発売日が2016年5月20日に軒並み延期となっていますのでご注意を。

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