『Lars Ulrich - Forkalet med frihed』の続きを。第4章4回目。(前回までのお話は関連記事にてどうぞ。)有志英訳を管理人拙訳にて。予告どおり、レコード契約の話を中心に。
ひとつのバンドと契約を結ぶためにCEOと副社長を連れてくる熱意たるや。メンバーと歳も変わらないことは文章でもわかりますが、当時の写真を観ると改めて驚かされます。
ラーズ・ウルリッヒとマイケル・アラゴ
次回はマネジメント会社、Qプライムの登場です。続きはまた後日。
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アマー島に戻ってジョニーZが結局約5万ドル支払ったレコーディングを完了する前に、レコーディングの間で、メタリカはイギリスへ渡りロンドンの伝説的なライヴハウス、マーキー・クラブで数回のショーを行った。『Ride The Lightning』のレコードという器は天文学的な金額ではなかったが、ジョニーZの予算とメタリカの野心がもはや釣り合わなくなっていたことは明らかだった。
メタリカが4月にスウィート・サイレンス・スタジオに戻って、最後の曲をレコーディングし終えた時、メタリカはスタジオの天井部屋(家具なしの物置き部屋)にしばらく住んでいた。そこにはフレミングが持っていたメルクリン社製の鉄道模型が置いてあった。例えるなら、ラーズと彼のバンドは『Ride The Lightning』によって自分たちの列車を線路に載せたと言える。
これまでにメタリカはスウィート・サイレンス・スタジオでいくつかの訪問を受けた。例えば、ラーズの昔からの憧れであるモーターヘッドが所属するブロンズ・レコードの重役の訪問があった。重役ジェリー・ブロンからの『Ride The Lightning』をアメリカでリリースする前にリミックスするという提案は、バンドのテイストではなかった。しかしジェリー・ブロンがお金をふりまいて、マネージメントとレコード契約の両方を提示していたため、交渉の扉を開け続けておくことが重要だった。ビジネス意識の高いラーズは契約というスタートの洗礼を熱望していたが、自分たちの音楽に関する全創作のコントロールを持つという信念をすでに固めていた。だからリミックスは行わない。そうでなければ、契約を結んでいたのだ。
アマー島のスタジオで作曲されたため、『Ride The Lightning』にこだわる本当に正当な理由があったのだ。『Kill 'Em All』から始まった狂乱した反逆は、重量、ニュアンス、バリエーション、コントラストを増していた。『Ride The Lightning』はアコースティックのイントロでそっと美しく始まり、突然『Kill 'Em All』のどの曲よりも速いと思わせるこの上ない速度のハードコアなヘヴィ・リフと打ち鳴らされたツー・バスへと変わる。「For Whom The Bell Tolls」のような曲はヘヴィという言葉に安心感を与えた。「Creeping Death」はど真ん中の巨大なメタルサウンドにオリエンタルな雰囲気をまとっていた。そしてH.P.ラブクラフトのテーマであるプログレッシブなインストゥルメンタル長編曲「The Call of Ktulu」である。そこには「リード・ベース」を弾いたクリフの名前がクレジットされていた。
『Ride The Lightning』のプロダクションはデビューアルバムと比べても異なっていた。ヘヴィで内容もあった。それはたくさんの内容が。『Kill 'Em All』とはずいぶん異なり、歌詞の中には情熱とアイデアが突如として現れた。電気椅子による死刑について唄った表題曲、自由へのけたたましい賛歌「Escape」、新しくより内省的で思慮深い歌詞と音調で最も異国風なパワー・バラード「Fade To Black」。この曲を多くは−女性にまで広がったリスナーでさえ−孤独と絶望に打ちひしがれた人の遺書だと解釈された。実際はボストンのチャンネル・クラブの外で起きた前述の盗難により機材が失われたことを元にしている。「Fade To Black」もデモテープの頃や『Kill 'Em All』時代からのファンをバンドの虜にした。
メタリカは、全体として動かしがたい過激さだけでなく非常に先駆的に仕上がったヘヴィメタルアルバムを、アメリカではジョニーZのメガフォース、ヨーロッパではミュージック・フォー・ネイションズでまずリリースした。アルバムは7月27日にリリースされ、夏が終わる前には世界で85000枚も売れた。ラジオやテレビの手助けなしではあったが、アンダーグラウンドシーンの絶え間ない口コミ、ヘヴィメタル誌に載った称賛レビューと多くの熱意溢れる物語によるこの事態は、ヨーロッパとアメリカでの着実なバンドのパフォーマンスによってさらに刺激された。8月3日にメタリカがニューヨークのローズランド・ボールルームで行ったツアーについて、ラーズは約束どおり、エレクトラ・レコードのマイケル・アラゴにこっそり知らせた。
マイケル・アラゴはその夜、ローズランド・ボールルームに一人で現れなかった。この熱狂的な若者はエレクトラ・レコードの最高経営責任者ボブ・クラスノウ、プロモーションとマーケティング部門の副代表マイケル・ボーンの分のチケットを入手していた。アラゴにとってエレクトラ・レコードでのA&Rとして初めて大きな決定がなされる大事な夜であった。しかもこの22歳の男が初めて観るメタリカのコンサートでもあった。
わずかに年上のマイケル・ボーンは、振り乱した髪と汗まみれの身体でゴチャゴチャになった真っ只中でどうすればいいのかわからなかったし、ステージから流れるとてもハードなヘヴィメタルで大暴れしているところをどう移動すればいいのかもよくわからなかった。だが、ボーンにとって楽しむためのコンサートではなかった。仕事をしに来たのだ。そこで彼はグッズ販売ブースに行くとメタリカのTシャツがすでに売り切れとなっているのに気がついた。これは興味深い。
(ラーズが始まって以来の「メタリカの最悪なショーのひとつ」と言っていた)ショーが終わると、ラーズはアラゴをバックステージエリアへと案内した。おそらくバックステージパスなしで(!)、汗まみれでアドレナリンがまだ脈打っている状態のバンドに向かってアラゴを押しやった。アラゴのメッセージは短く単刀直入なものだった。「明日、キミたちはウチのオフィス以外どこにも行かないでくれ!」
クリフ・バートンがすぐにこう尋ねた。「そこにビールはたくさんあるかい?」
「もちろん、食べ物だってある。」アラゴは断言した。
しかし、最も重要なのはレコード会社の熱心な人間とその同僚、そして献身的なバンドとの間にケミストリーが確立したことだ。
アラゴのオフィスはマンハッタンに位置しており、そう大きくはなかった。メタリカはすでに「Alcoholica」の称号を得ており、バンドはアラゴのオフィス内で喜んでたくさんの冷えたビールを飲み、テイクアウトの中華料理をむさぼり食べた。ビールを飲み、中華料理を食べ、『Ride The Lightning』を再生し、未来について語った。アラゴの意見は明白だった。『Ride The Lightning』は小さな独立レーベルで出すにはあまりに重要すぎるアルバムなのだと。
メタリカはマイケル・アラゴと彼のバンドや音楽に対するアティテュードを気に入った。彼らはドアーズ、MC5、イギー・ポップ・アンド・ストゥージズのようなロック史における革新的なビッグバンドを輩出している会社として有名なエレクトラ・レコードも気に入った。最も重要だったのは、アラゴがメタリカとサインを交わし、それから数週間後にラジオ向けの曲をバンドにお願いするなんてことをしようとしなかったことだ。アラゴはメタルファンであり、メタリカの器がおさまるべき、未開のヘヴィメタル市場があるとわかっていた。そのアティテュードは『Ride The Lightning』をその年の後半に再リリースした時に、エレクトラが考案して作ったラジオ広告にも反映された。「おそらくキミはメタルを聴いたと思ってるだろう。じゃあ、とっくに本物を聴くべき時が来ている。メタリカを聴く時だ!」
英訳元:http://w11.zetaboards.com/Metallichicks/topic/794989/10/
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