2016年12月17日、オークランドのFOXシアターでライヴを終えたばかりのジェイムズ・ヘットフィールドがThrasher Magazineのインタビューで多岐にわたって語っていました。管理人拙訳にてご紹介します。

Metallica_Intro
−あなた方は巨大スタジアムでのツアーやフェスティバルをやってきましたが、最近は小さな会場に戻ってきました。FOXのような会場でやることで、80年代の「かぶいて」いた時代に戻っていませんか?

(笑)そんなところだ。とても楽しいよ。これがプロモツアーの最後日なんだ。ニューヨーク、LA、ロンドン、パリ、ベルリン、そしてここと、至るところで盛り上げるべく小さなギグをやって宣伝してきた。新曲を演奏したり、みんなを興奮させたり、楽曲を公にする。そう、メタルをね。俺は小さな会場でバンドを見る方が好きなんだ。この会場も大好きだよ。FOXは本当にすごい。ここでたくさんのライヴを観るために子供たちを連れて来ていたんだ。最近やったクラブのなかでは一番大きいんじゃないかな。これまでに150くらいは行ったけど、楽しかったよ。ロンドンでは、ハウス・オブ・バンズでやった。

−私はそこに行っていました。あれは素晴らしいショーでしたね。

クールだったよ。最高の音とはいかなかったけど、すごいトンネルにいたね。

−本当にロンドンの迷宮のようでした。あのショーはバッジー(Budgie)の「Breadfan」で始まりました。他のバンドに敬意を表し、ルー・リードのような他のアーティストとコラボレーションしていることは素晴らしいと思います。こういった曲をカバーしたり、アーティストと一緒に仕事をすることはあなたにとってどういう意味を持つんでしょうか?

あぁ、俺たちが影響力を持っているように、全ての世代が自分たちの影響力を持っている。俺たちが誰かに何かを教えなければならないというわけじゃない。俺たちにとって、そんな人たちと仕事をするのはエキサイティングなんだ。そういう人たちは既成概念に捉われない。俺たちにとってカバー曲をやるのはいつだって楽しい。メタリカへの道を進むなかで俺たちの助けとなった全てのバンドに敬意を表するよ。わかるだろ?ミスフィッツから、ラモーンズ、モーターヘッド、ブルー・オイスター・カルト、全てのNWOBHMのバンドまでね。だから俺たちが人に教えなきゃならないわけじゃないけど、何と言うか、自分は違うやり方で子供たちに教えていると思う。車で学校に送るときに「じゃあ今週はビーチ・ボーイズ、来週はラモーンズ、その次の週はAC/DCだ」って具合に何かを流している。子供たちがそれを好きにならなくてもいいけど、少なくとも知る必要があるんだ。

−あなたが運転しているとき、誰もラジオに触れたりしないんですか?

まぁ俺のホットロッド(カスタムカー)の大部分はラジオがどこにあるのか子供たちがわからない代物だからね。全て隠されているんだ。

−メタリカもThrasherも1981年に始まって、たくましくなってきました。長く続く秘訣は何ですか?

正直さ(が欠かせないこと)は間違いないよ。自分がしたいことをして、良いと思うものを演奏する。自分が良い感情を押し出して、アートに正直さを表せば、(そのアートを見出す)人が現れる。俺たちは自分たちの仲間がないことをかなり早い時期にわかった。だから自分たちの仲間を作ったんだ。パーティーをやってみんなを招待する。もしその仲間が好きじゃないなら来ないでくれ。単純なことだよ。Thrasherも同じだと思う。最近では大きな影響を与えている。俺の息子はThrasherのものを着ているしね。俺はそんなこと知らなかったから訊いたよ。「あれはどこで手に入れたんだ?」って。息子は「うーん、クールだと思ったんだよ」って感じだったな。

−あなた方は『Hardwired...To Self-Destruct』のリリースで古い型をぶち壊しました。誰もがこのデジタル世界でアルバムをリリースするベストな方法を見つけようとしています。あなた方は先を行って、全ての曲のミュージックビデオをリリース直前に公開しました。こういうアプローチをとった理由は何でしょうか?

わからない。あれはその時あったいくつかのアイデアの組み合わせだよ。ルールなんてないからね。少なくとも今はルールなんてものはない。もうちょっと伝統的な時代に戻れば、これがアルバムをリリースする方法、これが始める方法とかそんな感じだった。でも今は人に音楽を届けるための方法がたくさんある。俺たちは間違いなくYouTubeが今どんな位置にあるのかわかっていた。つまり、俺がやり方を学ぶために必要なものは、YouTubeで調べて誰かがそれについて教えてくれたんだ。もし俺が新曲を聴くとしたら、YouTubeで何かを観たいと思うだろう。俺もとにかく誰かがやるだろうと思った。アルバムのカバーや写真なんかで、誰かが自分の曲でビデオを作るんだ。だからそれを正しいものにしよう、良いものにしようってね。

−でもオンラインに全てを出すことによって、オンライン上での著作権侵害に屈したように感じませんか?ナップスターとの争いの後、たとえどんなに著作権を侵害されても、管理していた方がマシだと思いますか?

そうだな。ある意味ではそう思う。自分たちのものを奪う人たちと争っていたのは、道徳的な争いだった。テクノロジーや便利さとの争いじゃない。俺たちは金庫を開けられたように感じたんだ。押し入って老人の有り金を全てつかんで窓の外に投げ始めるちびっこギャング(原題:The Little Rascals)のようだった。お金についてじゃないけど、多少はお金についての問題でもある。俺は趣味でこんなことやってるんじゃないんだ。俺は自分がやっていることが大好きだけど、それは生きる糧だ。これが趣味だったら違った見方をしていたかもしれない。俺は趣味だと言っているヤツに自分の車のブレーキをいじって欲しくはない。プロにやって欲しいと思う。救急隊員が自分の家に「これは私の副業なんです。楽しくてやってます!」なんて言ってやってきたら、「おいマジかよ」ってなるだろ。大好きだし、自分たちや家族を支えるからやっていることなんだ。もちろんテクノロジーは素晴らしいよ。俺たちはそれによって起きていることも大好きだしね。物事がどうなるかわかったら、俺たちはそれを受け入れてきた。自分たちのコントロールの範囲外なんだから、活用してユニークなことをしよう、それが全てにおいて俺たちがやってきたことなんだ。違ったものをやってみたい。それが全てだよ。

−人が音楽を聴くのにどれくらい便利で使いやすいものになっているのかを考えるとクレイジーですね。人はほとんどの場合、どこにいてもどんな曲でも聴くことができます。アナログ盤の売上げが伸びているという事実は驚くべきことです。なぜ人はまだアナログ盤に惹かれるのだと思いますか?

かなりすごいことだね。俺の子どもたちもアナログ盤が好きなんだ。最初は「へぇ、これはレトロだ」って目新しさでアーバン・アウトフィッターズ(訳注:アメリカの衣服メーカー、家具・雑貨等も扱っている)でレコードとプレイヤーを買った。でも子供たちはそれが好きだし、あれにはその、儀式があるのが好きみたいだね。レコードを置いて、針を落として、聴くっていう。実際にアナログ盤を聴くんだ。外だったり、運転してたり、(いつも)音楽を聴いているような場所じゃないけどね。レコードを置いて座って音楽を聴く。アナログ盤は決して消えないし、間違いなく人気だよ。誰かが俺に言っていたな、1日だか1週間だかアナログ盤がデジタル音源の売上げを上回っているってね。それを聴いた時は本当に素晴らしいと思ったね。いろいろあるのが良いんじゃないか。

−人は(実際に)何かを手にして見るのを持っているのが好きなのではないかと。

それは疑いようがないね。何かを手にしてそれに時間をかけるというのはいつの時代もクールだよ。オンラインだと、いつも「ちょっとここで時間を無駄にしたな」って気持ちがあるし。アナログ盤は単純に大きなプラットフォームでもある。よりクールなアートワークで、よりエキサイティングなものになるんだ。

−どのようにして『S&M』でサンフランシスコ交響楽団と関わるようになったのでしょうか?

あれはマイケル・ケイマンとやったことだ。彼はそれまでに何組かのロックグループと仕事をしたことのある指揮者だった。それがピンク・フロイドだったかどうかはわからないけど、ブライアン・アダムスだったのは知っている。マイケルはその(クラシックの)世界を持ち込んだ人だったし、それが彼のビジョンだったんだ。彼はメタルバンドをやりたかった。そうして彼が俺たちのところにやって来たとき、俺たちは「そりゃあいい、やってみよう」ってなった。それには多くのことが必要だった。サンフランシスコ交響楽団と一緒に演奏するってなると、バークレーに移動しなきゃならなかったんだ。サンフランシスコでアコースティック楽器のための音響設備が揃っているところだからね。俺たちがプラグをつないでみると誰も何も聞こえやしなかった。ゴチャゴチャしてたんで、サウンドを適切なものにするためにたくさんのことをやらなきゃならなかったよ。あれにはたくさんの力がいった。それが俺たちがつながった場所なんだ。本物の音楽家と演奏するのは俺にとってはかなり緊張したね。なぜ彼らを本物だと思ったのかはわからない。譜面を読めるとかそんなところかな。俺たちは譜面の読み方はわからなかったけど、感じたんだ。(音楽の)力が大好きだし、それが俺たちに作用することも好きだ。そこまでつながろうとね。彼らは間違いなく同じことを感じていた。タイムカードを押して、座って演奏して自分の分の譜面を読んで、またタイムカードを押して帰るなんて人も間違いなくいた。大部分の人たちは自分たちがしていることが間違いなく大好きで、そうじゃなかったらそんなことやらなかっただろう。彼らはそれまで以上に力強く感じるサウンドになるのを助けてくれたんだ。

−メタルソングを演奏するのにがっかりしているクラシック音楽純粋主義者はいなかったんですか?

知っての通り、NOだ。もしそうだったとしても俺たちにそんなところは見せなかったね。確かに仕事としてやってるだけって人もいたけど、他にも「なんてこった!私はウチではヒーローだよ。子供たちはこの企画のことが大好きなんだ。」なんて人もいた。ハープ奏者の人は、タキシードの下にメタリカTシャツを着ていて、さらにその下にはタトゥーが彫ってあった。彼は交響楽団でハープを演奏する、タトゥーをしたバイカーだったんだ。あれはすごかったね。

−スポーツチームのようにベイエリアでホームアドバンテージを感じることはありますか?

ホームにいるのはいつだって心地いい。そのエリアだと感じるよ。俺はもうここには住んでいないけど(訳注:ジェイムズはコロラド州に引越しをしている)ここでたくさんの時間を過ごしてきて、間違いなくホームだと感じている。FOXシアターのように何回も来ている場所もあるし。心地がいいんだ。俺たちはどこに行っても心地よく過ごしているけど、家に帰って自分のベッドで寝るのはいつだって最高だよ。

−あなた方には「Enter Sandman」を喜んで繰り返し聴く頑強なファンがいますが、CIAがあなた方の楽曲を囚人を拷問するために使っていたことに対して怒っていますか?

(笑)俺たちは長いあいだ、みんなを拷問してきたわけだ。CIAよりずっと年季が入ってる。それについては本当に何も言うことはないよ。もしそうだとしたら、自分の国が自分たちの安全を守るために何か使ってるっていうことは名誉なことだと思う。でも繰り返しになるけど、一度音楽を世に出したら、もう自分のコントロールは効かない。ちょうど誰かがオンライン上で表に出すようにね。彼らがすることのために使うんだ。メタリカのカバーバンドはいっぱいある。「Enter Sandman」「Nothing Else Matters」をグレゴリオ聖歌風にしたり、ブルーグラス風にしたり、ケルトハープのコンボだったりとね。音楽はそこにあって、為すがままに使われるんだ。

−ケリー・キングはインタビューでスレイヤーの方がもっと恐ろしいから、より効果的だと話していましたよ。

同意するよ。それについては疑いようがないけど、スレイヤーよりも恐ろしいものも他にまだある。そこにはかなり強烈にクレイジーなものがあるんだ。

−最近のショーの多くは地元の慈善団体と結びついてますね。

ごく簡単なことだよ。長いあいだやってきたことだけど、『Death Magnetic』のツアーのあいだでより慣習的なものになった。コンサート、バックステージ、ケータリングで食べ物が余っていたら、それを使ってみよう。お金なら送るのはもっと容易い。食べ物の場合、悪くなってしまうことを心配しなければならない。誰かが傷つくのは嫌だからね。ここで良いことをしようとする。最終的には無駄がなくなるんだ。(残った食べ物が)ゴミ箱に放り込まれたら、何とかして地球に戻っていく。ウジ虫が大好きで、それがハエに変わり、サイクルが続いていく。それを人間まで到達させるのは使命だ。

−素晴らしいです。Thrasherの読者に言いたいことはありますか?

俺たちはニューアルバムへの反応、みんながどれだけ新譜を好きなのかを目の当たりにして信じられないほどの衝撃と驚きを感じている。35年経ってなお、ステージに出て全精力を尽くすのが楽しいのと同時に自分たちをアスリートのように感じている。50代になってなおスケーターとしてやっている人を知っているけど、最高だよね。だからそういう限界を超え続けて欲しいな。

Thrasher Magazine(2017-03-03)

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