メタリカ情報局

メタリカを愛してやまないものの、メタリカへの愛の中途半端さ加減をダメだしされたのでこんなブログ作ってみました。

       

    タグ:ブラック・サバス

      このエントリーをはてなブックマークに追加
    RollingStone誌の特集でラーズ・ウルリッヒがお気に入りのヘヴィメタル/ハードロックのアルバム15選を発表していました。
    lars-ulrich-says-favorite-metal-albums

    各アルバムに対するコメントを訳していたら、えらい長文になってしまったので3回に分けて紹介していきます。

    acdc-let-there-be-rock
    AC/DC - "Let There Be Rock" (1977)

    これはAC/DCで一番ヘヴィで濃くてエネルギッシュなレコードだ。(収録曲の)4、5曲はAC/DCのライヴ定番曲だね。「Let There Be Rock」「Bad Boy Boogie」「Whole Lotta Rosie」「Hell Ain't a Bad Place to Be」とか。これらの曲を何回ライヴでやっているかなんて把握しようとさえ思わないよ。

    明らかに、AC/DCが『Highway to Hell』で(プロデューサーの)マット・ラングと手を組んで、ラジオヒットになる3、4分のロックソングっていうアイデアを完成させることになる前のアルバムだ。このアルバムには2つのギターの完璧なバランスがあった。つまり、無限のギターソロとリフっていうアンガスとマルコムの演奏がね。多くの曲が1人がリフを弾くところから始まる。それから16小節か32小節ぐらい後に、両方のギターが同じリフを弾いていくんだ。その後、ボン(・スコット)が女性やお下品なことや違法行為について漫画みたいな遠慮なしの素晴らしい歌詞で入ってくる。スタジオで座っているかのように聴こえるアルバムの1つだ。曲の冒頭では、アンプが鳴っているのが聴こえるし、カウントインみたいなスタジオでの会話とかそういったことも聴こえる。これは生の、絶対的なピークにあったブルースを基調としたハードロックだね。

    そしてこれには俺のAC/DCのお気に入り曲からカットされるかもしれない曲が1つある。「Overdose」だ。あの曲では、2人のギターが絡むとこれまでで一番ヘヴィなものになるんだ。俺が知る限り、あの曲はライヴでやってない。たくさんの俺みたいなAC/DCの熱狂的純粋主義者からしたら、一番最初に外されてしまう曲だと思う。アンガスになんでライヴでやらないのか訊くに至ってないけど(笑)、今はアクセル(・ローズ)がいるから・・・彼らが長い間やってなかった曲をアクセルがやるようだからね。アンガスに訊かずとも、アクセルがやってくれれば見れるかもしれない。

    alice-in-chains-dirt
    ALICE IN CHAINS - "Dirt" (1992)

    俺が初めてアリス・イン・チェインズを紹介されたのは、最初のアルバムが出た90年の夏だった。俺たちはLAにいて、ブラックアルバムのレコーディングをしていた。俺たちは街のあらゆるバーやクラブで彼らを見たよ。彼らは超クールなヤツらだった。若くて、大らかで、楽しくて、ちょっとトチ狂ってる。彼らがシャツの下に長い肌着を着ているのは理解できなかったよ。ネルシャツでもって、俺たちがそれまで見たことのないような全く違った出で立ちをしててクールだったね。彼らの音楽はめちゃくちゃヘヴィで、アティテュードもとても良かった。

    それから『Dirt』が出て、(1作目から)2年後だったか、ダークでディープなレコードだった。その当時、俺たちはあのレベルの薬物乱用を経験していなかった。俺たちはたくさん酒を飲んでいただけで、俺たちがやったことのほとんどはもっと社交的なパーティーみたいな雰囲気のなかでのことだった。クローゼットやホテルの部屋で隠れてやるようなドラッグ文化には精通していなかったんでね。ヘヴィなドラッグに夢中になってたアイツらはあまり社交的ではなかった。だから俺は最初、このレコードの点と点を結び付けていなかったんだ。全てのドラッグに関する言及については理解していなかったけど、ヤツらのことをよく知るようになると、このレコードのことをよく理解できるようになってきた。このレコードの叙情的な重さが俺の心を打つんだ。

    信じられないほどディープでダークなレコードだね。間違いなく「Rooster」は信じられないほど美しい曲だ。俺はそれがジェリー(・カントレル)の親父さんか何かについてのことかどうかなんて知らなかった。でも「Rain When I Die」と「Dam That River」といった超ヘヴィで短い曲も素晴らしいものだった。クレイジーだね。おそらく俺が最も聴いてきた92年に出たレコードの1つか2つのうちの1つだ。


    black-sabbath-sabotage
    BLACK SABBATH - "Sabotage" (1975)

    たくさんのブラック・サバスな人たちを知っているけど、大概『Paranoid』か『Master of Reality』なんだよ。俺にとっては「Hole in the Sky」と「Symptom of the Universe」のワンツーパンチで最高潮に達し、そこからさらにディープな「Megalomania」だ。さながら本格的なヘヴィメタルへの旅路だね。ビニール盤を見れば、A面はブラック・サバス最強の20分だよ。そこからの「Symptom of the Universe」だろ?リフのシンプルさ、ダウン・ピッキング、チャグ音だろ?間違いなくハードロックとメタルの核となる青写真は80年代・90年代のような音に行き着いたんだ。

    俺が最初に手にしたサバスのレコードはこれの前の『Sabbath Bloody Sabbath』だった。あれが出た73年のクリスマスで手に入れた。全てにゾッとしたね。「Sabbath Bloody Sabbath」は2番のパートで「Where can you run to?/What more have we done?/ ... Sabbath, bloody sabbath/Nothing more to do どこへ逃げようと言うのだ/他に何ができると言うのだ/...血まみれの安息日/もはやなすべきものなどない」おぉ怖っ、クレイジーだね。このレコードは俺がアップテンポのエネルギーと呼ぶものを他のアルバムよりももう少し持ち合わせていた。おそらくそれも俺のお気に入りだと言う理由の一部なんだろう。明らかに彼らのサウンドは先へ進むにつれて少しずつ高度になってきた。初期のレコードにはシンプルさがある。そこは俺も素晴らしいと思うけど、音としては『Sabotage』が最高のサウンドのレコードなんだ。


    blue-oyster-cult
    BLUE OYSTER CULT - "On Your Feet Or On Your Knees" (1975)

    これは究極のライヴアルバムだね。収録曲の大半はブルー・オイスター・カルトのアルバム『Secret Treaties』からだ。「Cities on Flame」のような初期のヒット曲、「The Red and the Black」のようなレア曲、70年代の素晴らしきハードロック・バラード曲の青写真、「Last Days of May」が収録されている。このレコードは内容が詰まっていて一貫性がある。

    バンド全員が歌っている。「Cities on Flame」はドラマーが歌っていると思うよ。5人のメンバー全員がギターを弾いている「ME 262」とかね。5人全員が互いに並んでギターを弾いている写真があるんだ。さながら究極のギターソロって感じさ(笑)。2人のギタリストがいたと思ったら、ドラマーが出てきて演奏するんだ。

    ブルー・オイスター・カルトにはニューヨークのコネクションもあった。ダウンタウンの知識人で、CBGB(訳注:ニューヨークシティマンハッタン区のブリッカー通りの東端に当たるバワリー315番地にあった伝説のクラブ、現在は閉店)のシーンの一部となっていた。パティ・スミスは、キーボードのアラン(・レイニア)と関係を持っていた。彼らはルー・リードとヴェルベット・アンダーグラウンドが出てきたニューヨークの知的なシーンの一部になっていたんだ。このアルバムは当時の他のロックバンドによるネアンデルタール人的なアプローチに比べて、もう少し考え抜かれていて、スマートなものだった。精巧さを持ち合わせていたよ。


    deep-purple
    DEEP PURPLE - "Made in Japan" (1972)

    あきらかにディープ・パープルには「Highway Star」から「Smoke on the Water」やら「Speed King」やら他の全ての曲に至るまで常軌を逸した曲がある。でもアルバム・バージョンとライヴ・バージョンの違いがここまで劇的に違うバンドはおそらく他にはいないだろうね。『Made in Japan』は俺が手にしたディープ・パープルの最初のレコードなんだ。ビニール盤ではサイド1、2、3でそれぞれ2曲収録されていて、サイド4ではたった1曲「Space Truckin」が収録されているんだぜ?(1曲だけで)ほぼ20分だ。俺がアルバムを手に入れた数年後に『Machine Head』を手に入れたらこうさ。「えぇ!?「Space Truckin」って3分?残りの17分はどこから?」探検するような感覚だった。

    ディープ・パープルとして5人全員がステージに集まっていた。ビデオ映像を見ると、全員が互いにけしかけているのを観ることができるよ。ブラックモアがソロになると、右手を上げるのがわかる。それはドラマーのイアン・ペイスが次のパートに入るための合図なんだ。全てが完全に自由なんだけど、それはヒッピーがトリップしたような「4時間マッシュルームをやろうぜ」とかそういうものじゃない。結束があり、繋がりがあるんだけど、全てのライヴバージョンは違う。全てのコンサートが別物だ。ソリストが何小節やるのか、どこまで一緒に弾くのか、その全てを知っていることは決してなかったんだ。

    3つのショーだって?大阪で2公演、東京で1公演、1972年の8月だって?ちょうど彼らが一番凶暴な時じゃないか。「Child in Time」のギターソロ、俺はオーネット・コールマンとクレイジーなマイルス・デイヴィスが大好きだったジャズ純粋主義者のために演奏したことあるけど、リッチー・ブラックモアとイアンペイスの相互作用はほとんどジャズのそれだよ。同時に「Highway Star」のような曲では、間違いなくダウンピッキングで最前線でリフを奏でているんだけど、(テクニックを超えた)エネルギーなんだよ。内部で摩擦の多いバンドだから、ステージに一緒に上がると、そこには駆け引きがあるわけさ。ステージ上で互いにけしかけたり、無理強いさせたり、急かしたり、やり尽くそうとしたり。信じられないほど凶暴な絶「聴」をもたらすよ。

    10、15年前に『Deep Purple Live』と呼ばれるあの日本の3公演を完全収録されたものが出たんだ。3公演の「Highway Star」「Child in Time」「Space Truckin」「Lazy」「Strange Kind of Woman」を続けざまに聴いたら、ギターソロ、ドラミング、ヴォーカルの違いが信じられないだろうね。


    RollingStone(2017-06-22)

    AC/DC - Overdose


    ALICE IN CHAINS - Rooster


    BLACK SABBATH - Symptom of the Universe


    BLUE OYSTER CULT - Cities On Flame


    DEEP PURPLE - Space Truckin


    続きはまた後日に。

    ブログランキングに参加しています。
    応援クリックをヨロシクお願いします。

    関連記事
    ラーズ・ウルリッヒ、ディープ・パープルのロックの殿堂入りプレゼンターとしてスピーチ
    ラーズ・ウルリッヒ「ディープ・パープルがロックの殿堂入りとなるよう働きかけている」
    ラーズ・ウルリッヒ「Spotifyとは現時点ではうまくいっている」

      このエントリーをはてなブックマークに追加
    ビルボードにて昨年暮れから先週までのアメリカ国内のコンサート売上ランキングを発表。今回のランキングではメタリカの他、ブラック・サバス、アイアン・メイデン、AC/DC他、多くのロック、メタルバンドがランクインしています。メタリカはスーパーボウル前夜祭「The Night Before」で7位にランクイン。主なロック、メタルバンドについて抜粋したUltimateGuitar.comの記事からご紹介します。

    20160206

    アーティスト:Metallica, Cage the Elephant
    会場:San Francisco, CA - AT&T Park
    日付:2016年2月6日
    総売上額:$4,341,114
    入場人数/収容人数:41,119 / 43,681
    チケット価格:$149.50, $49.50

    アーティスト:Iron Maiden, The Raven Age
    会場:Inglewood, CA - The Forum
    日付:2016年4月15-16日
    総売上額:$2,218,068
    入場人数/収容人数:24,886 / 24,886
    チケット価格:$94.50, $54.50

    アーティスト:Black Sabbath, Rival Sons
    会場:Sydney, AUS - Qudos Bank Arena
    日付:2016年4月23日
    総売上額:$1,458,830
    入場人数/収容人数:13,717 / 13,717
    チケット価格:$115.98, $100.51

    アーティスト:Tool, Primus, 3Teeth
    会場:San Diego, CA - Viejas Arena
    日付:2016年1月9-10日
    総売上額:$1,447,470
    入場人数/収容人数:17,870 / 18,582
    チケット価格:$79.50, $59.50

    アーティスト:AC/DC, Tyler Bryant, The Shakedown
    会場:Las Vegas, NV – MGM Grand Garden
    日付:2016年2月5日
    総売上額:$1,416,474
    入場人数/収容人数:13,491 / 13,817
    チケット価格:$137, $72

    アーティスト:Muse, X Ambassadors
    会場:Philadelphia, PA - Wells Fargo Center
    日付:2016年1月31日
    総売上額:$586,933
    入場人数/収容人数:13,103 / 13,563
    チケット価格:$74.50, $45

    アーティスト:Def Leppard, Styx, Tesla
    会場:Sunrise, FL - BB&T Center
    日付:2016年1月29日
    総売上額:$472,690
    入場人数/収容人数:7,083 / 8,440
    チケット価格:$121.50, $31.50

    アーティスト:Five Finger Death Punch, Shinedown
    会場:Pittsburgh, PA - Consol Energy Center
    日付:2016年5月9日
    総売上額:$394,580
    入場人数/収容人数:8,520 / 8,520
    チケット価格:$49.75, $25

    アーティスト:Megadeth, Suicidal Tendencies, Children of Bodom, Havok
    会場:Hollywood, CA – Palladium
    日付:2016年2月28日
    総売上額:$174,914
    入場人数/収容人数:3,670 / 3,909
    チケット価格:$49.50

    アーティスト:Smashing Pumpkins, Liz Phair
    会場:Ft. Lauderdale, FL - Broward Center for the Performing Arts
    日付:2016年5月1日
    総売上額:$155,876
    入場人数/収容人数:2,170 / 2,443
    チケット価格:$79.50, $49.50

    アーティスト:Lamb of God, Anthrax, Deafheaven, Power Trip
    会場:Hollywood, CA - Palladium
    日付:2016年2月12日
    総売上額:$116,620
    入場人数/収容人数:3,789 / 4,594
    チケット価格:$39, $35

    アーティスト:Dream Theater
    会場:Oakland, CA - Fox Theater
    日付:2016年5月8日
    総売上額:$114,746
    入場人数/収容人数:1,732 / 1,859
    チケット価格:$85, $49.50

    アーティスト:Breaking Benjamin
    会場:Nashville, TN - Ryman Auditorium
    日付:2016年1月24日
    総売上額:$71,910
    入場人数/収容人数:2,198 / 2,362
    チケット価格:$30

    アーティスト:Amon Amarth, Entombed A.D., Exmortus
    会場:Montreal, QC - Metropolis
    日付:2016年4月29日
    総売上額:$64,094
    入場人数/収容人数:2,190 / 2,200
    チケット価格:$31.83, $29.04

    アーティスト:Puscifer, Luchafer
    会場:Huntington, NY - The Paramount
    日付:2016年4月9日
    総売上額:$63,010
    入場人数/収容人数:1,302 / 1,573
    チケット価格:$48

    アーティスト:Ghost, The Shrine
    会場:Huntington, NY - The Paramount
    日付:2016年4月15日
    総売上額:$52,173
    入場人数/収容人数:1,442 / 1,573
    チケット価格:$36

    アーティスト:Coheed & Cambria, Glassjaw, Silver Snakes, I The Mighty
    会場:St. Paul, MN – Myth
    日付:2016年2月27日
    総売上額:$41,510
    入場人数/収容人数:1,815 / 2,800
    チケット価格:$49.50, $29.50

    アーティスト:Cannibal Corpse, Obituary, Cryptopsy, Abysmal Dawn
    会場:San Francisco, CA - The Fillmore
    日付:2016年3月7日
    総売上額:$26,378
    入場人数/収容人数:1,199 / 1,301
    チケット価格:$22

    アーティスト:Steel Panther, MF Ruckus, Everybody Panic!
    会場:Denver, CO - The Fillmore
    日付:2016年3月3日
    総売上額:$24,460
    入場人数/収容人数:2,122 / 3,600
    チケット価格:$12

    アーティスト:The Wonder Years, letlive., Microwave, Tiny Moving Parts
    会場:Huntington, NY - The Paramount
    日付:2016年4月3日
    総売上額:$20,350
    入場人数/収容人数:995 / 1,573
    チケット価格:$20

    アーティスト:Geoff Tate's Operation Mindcrime, Extinction A.D.
    会場:Huntington, NY - The Paramount
    日付:2016年3月2日
    総売上額:$15,963
    入場人数/収容人数:773 / 1,573
    チケット価格:$21

    アーティスト:Cradle of Filth, Butcher Babies, Ne Obliviscaris
    会場:San Francisco, CA - The Fillmore
    日付:2016年2月21日
    総売上額:$14,896
    入場人数/収容人数:608 / 1,267
    チケット価格:$25

    アーティスト:Baroness, Mutoid Man
    会場:Montreal, QC - Theatre Corona
    日付:2016年5月1日
    総売上額:$10,880
    入場人数/収容人数:532 / 650
    チケット価格:$22.70, $19.91

    Billboard(2016-05-18)

    ブラック・サバスはツアーを廻るなかで9公演ランクイン、アイアン・メイデンも3公演ランクインしており、アメリカでも根強い人気がうかがえます。

    ブログランキングに参加しています。
    応援クリックをヨロシクお願いします。

    関連記事
    スーパーボウル前夜祭「The Night Before」まとめ
    ラーズ・ウルリッヒ、「The Night Before」のセットリストについて言及
    AT&Tパーク、スーパーボウル前夜祭「The Night Before」の“メタリカ爆音問題”に対処

      このエントリーをはてなブックマークに追加
    ラーズの伝記本『Lars Ulrich - Forkalet med frihed』の第1章の続き。有志英訳を管理人拙訳にて。日本語表記がわからないものはアルファベットのままにしています。今回はラーズが「楽器」を始めた頃のお話。

    - ロック・ミュージシャン誕生 -

    7歳の誕生日に(ラーズのいとこ)ステインは赤いエレキ・ギターとワウペダルをもらった。ラーズはそれを「クールだ」と思った。ステインはラーズにひっきりなしにギターを持っていいか尋ねられたと振り返る。ラーズはこの頃からすでに説得の達人であったため、ステインのギターを自分のものとしたのは当然の成り行きだった。つまり、ラーズはジョン・モーエンセン(訳注:デンマークのピアニスト、ソングライター)のデビューアルバムと交換したのだ。

    実際に真剣に音楽の方向に進む最初のステップは、学校で授業を取ることだった。そこでラーズは音楽の授業でギターのレッスンを受け始めた。今からそれを振り返るとラーズは吹き出した。ギター・レッスンはすでにロック愛好家だった少年にとっては滑稽な挑戦だったのだ。

    ラーズは笑い声を沈めると、笑みをたたえたまま、Maglegaard小学校で音楽教師レイフ・ダールガード(Leif Dahlgaard)の教え子として過ごした頃のことを興奮して話した。「俺はギターを習いに行った。出来はまあまあ。ギターを演奏している時、ギターを左足のどこに置いたらいいのか分からなかった。スパニッシュ・ギターみたいに3冊の本の上で片足立ちでいるみたいだった。そうやってみたけど(ラーズはエアギターでその様子をまねながら)それがギターの全てじゃない。全然ロックじゃなかったからやめたよ。それだけが原因じゃないけど、それが実際にドラムを始めた理由だね。」

    ドラムセットは持っていなかったが、1974年から1975年のあいだラーズは「バンドで演奏する」のが好きだった。

    「そう、バンドを始めたんだ。テーブル・フットボールの台をキーボードに見立てて、段ボール箱と箸をドラムセットみたいに塗って、リードシンガー用に特別なほうきの柄を用意して、2つのテニスラケットはもちろんギターとベースさ。そうやってバンドを始めたんだ!いろんな「楽器」を試しては考えていた。一度リードシンガーも試したんだ。Dunlopのテニスラケットを持ってね。でも結局、段ボール箱に落ちついたよ。」

    段ボール箱と絵筆がその場しのぎの最初のドラムセットになった。ラーズはそれをあたかもヘヴィなロックビートを奏でるチャンピオン、ディープ・パープルのイアン・ペイスばりに振り回していた。ラーズの叔母、ボーディルが「あの子が食事をしているとき、いつもあらゆるものを叩いていたのよ。ナイフとフォークでグラスとかお皿とかをね。」と語っているあいだ、父トーベンは鍋とナイフやフォークを使ったドラム癖を直させたことも思い出していた。

    しかし、12歳の少年と仲間たちがバンドの真似事をしていた頃に、本当のドラムセットを手にするまでは長い道のりだった。

    「一番最初に演った曲はスウィートの「Ballroom Blitz」だった。ステータス・クオーやスレイド(Slade)、そしてディープ・パープルの曲もあった。Lundevangの俺の部屋か、ローウラライ(Raageleje)の小さな2階の部屋に集まってた。金曜日の午後はステインとピーター・タルベックって子と他の子たちと外でステータス・クオーのライヴレコードの全曲を演ったのを覚えているよ。俺たちがやっていたのは、部屋まで「楽器」を持っていくってことだった。どんな季節でも、できるだけ暑くなるように暖房をいじってた。だから5分か10分もしたら汗が噴き出してくる。それがステージにいるみたいに思えたんだ。たぶんそれが最初の足掛かりになったと言えるんじゃないかな?」

    ラーズは少し考えてから続けた。「どうやってドラムを始めたのか本当はわからないんだ。親父の友だちの一人だったクラウス・ボイエ(Claus Boje)って人が俺に衝撃を与えたんだ。彼はアイスホッケー選手でありドラマーだった。ある時期、ホッケー選手とドラマーはまったく同じだと思ったんだ。ホッケー用のスケート靴を持っていたし、ゲントフテのスケートリンクに行っていたよ。75年から76年あたりかな。そしてもう一人、親父とよく集まっていた人がいた。彼の名はアレックス・リール(Alex Riel)。彼はNHOP(デンマークのベーシスト、Niels-Henning Orsted Pedersen)のドラマーで、コペンハーゲンに来ていた外国人ジャズマンのひとりだった。彼はデンマークのドラマーとして1位にランクされた人だった。彼にも本当に衝撃を受けたね。」

    「俺がお祖母ちゃんにひざまずいて本物のドラムキットを買ってくれるようお願いしたっていう身内じゃ有名な話があるよ。ジョン・ハートヴィ(John Hartvig)っていう店があって、たしか街でいくつかドラムを買ったところだと思う。イアン・ペイスが何年も持っていた銀色に光るドラムみたいだった。でもそれはイアン・ペイスとステータス・クオーのジョン・コーラン、あとちょっとボーナム(ツェッペリンのジョン・ボーナム)も入った感じの同じセットアップだったんだ。バスドラム、タムタムがあってタムドラムが2層になってる。あれは当時のワルがみんな持っていたものだった。」

    「そうやってイカしたドラムキットを手に入れて、地下室の自分の部屋に置いたんだ。そこに座るだけで楽しかったし、自分もドラムが演奏できると想像していた。あれは76年夏のことだった。ただ、あれは遊び場の一部だった。そこまで真剣なものじゃなかった。わかるかい?でもブラック・サバスのアルバム『Sabotage』の「Hole In The Sky」を演奏していたのを覚えているよ。」

    ラーズ・ウルリッヒの初めての聴衆のひとりであるステインは当時のドラム演奏を振り返る。

    「あの部屋は家族が地下室に住むようになってから、(家族が生活している部屋から)遠く離れてはいなかった。でも少なくとも両親がドアを閉めればラーズがやかましくできるくらいは離れた部屋だった。ディープ・パープルの『Made In Japan(邦題:ライヴ・イン・ジャパン)』に挑戦していた。『Burn(邦題:紫の炎)』を「Burn」からB面の「Mistreated」まで演ってたこともあったっけ。彼は数年間、ドラムを演奏することはすごいことだと思っていた。それから先に進んだんだ。」ステインはそう付け加えた。

    「音楽はテニスほど重要ではなかった。」とラーズは言う。「その頃を振り返ると音楽のために生きてはいなかった。自分ではテニス選手になることを想像していた。親父のように、音楽は趣味に過ぎなかった。」

    英訳元:http://w11.zetaboards.com/Metallichicks/topic/794989/7/

    lars-ulrich-denmark
    ドラムを打ち鳴らすラーズ少年

    小さい頃から交渉に長けていたり、聴く側だけではなくすでに演る側としての楽しみを追求していたり、と現在のラーズの片鱗が垣間見れるエピソードでした。

    はじめてバンドの真似事をした曲、スウィートの「Ballroom Blitz」はこちら。


    次回はラーズが将来の仕事と考えていたテニスとの関わりについて。

    ブログランキングに参加しています。
    応援クリックをヨロシクお願いします。

    関連記事
    ラーズ・ウルリッヒの原点を巡る
    ラーズ・ウルリッヒの原点を巡る(2)
    ラーズ・ウルリッヒの原点を巡る(3)
    ラーズ・ウルリッヒの原点を巡る(4)
    ラーズ・ウルリッヒの原点を巡る(5)

      このエントリーをはてなブックマークに追加
    メタリカも出演した今年のSonisphereフェス。BABYMETALも出演したということもあって取材陣が渡英したのか、ここ日本でもフェス特集本が発行されるとのこと。表紙にはデカデカとジェイムズ近影。

    headbung_fes
    ヘドバン PRESENTS 史上最高の英国メタル・フェス完全レポート&永久保存版!


    以下、プレスリリース。

    あの『ヘドバン』の別冊第一弾、英国で行なわれたフェス〈SONISPHERE〉と〈BLACK SABBATH TIME〉の徹底レポートでおくる『ヘドバン PRESENTS 史上最高の英国メタル・フェス完全レポート&永久保存版!』が8月20日(水)に発売されます。

    『ヘドバン』のカラー・ページ濃厚ライヴ・レポだけ抜き取って判型を大きくしたような、異例のメタル・フェス本となっている本書。各大トリにアイアン・メイデン、メタリカ、ブラック・サバスが登場、そしてBABYMETALは〈SONISPHERE〉のメイン・ステージに! メタル史上に残る歴史的瞬間をライター数名とで現地に乗り込み徹底レポート! もちろんBABYMETALの欧州単独各公演も完全にフォローしています。

    CDジャーナル(2014-08-06)

    B!誌ではなかなかの酷評だったメタリカのSonisphereライヴでしたが(苦笑)、こちらはどんなレポートになるのでしょうか?

    ブログランキングに参加しています。
    応援クリックをヨロシクお願いします。

    関連記事
    「ヘドバン vol.2」にて“俺たちのMETALLICA御柱祭”特集

      このエントリーをはてなブックマークに追加
    先日お伝えした掲題のトリビュート・コンサートのファン撮影の映像がYouTubeに続々とアップされました。2014年1月17日(金)カリフォルニア州オークランドのオークランド・メトロ・オペラハウスで行われたコンサート。参加したのはロバート・トゥルージロや主催のマシーン・ヘッドのロブ・フリンの他、スレイヤー、テスタメント、マシーン・ヘッド、エクソダス、スーサイド・サイレンス、デス・エンジェルのメンバーら。

    bs_tr

    Hole in The Sky




    Into The Void


    Sweet Leaf






    Children Of The Grave


    War Pigs


    Symptom Of The Universe


    Killing Yourself to Live


    Paranoid


    Iron Man


    BLABBERMOUTH.NETより(2014-01-20)

    その他の曲、動画は記事ネタ元リンクよりどうぞ。(当日のセットリストは探したけどみつけられませんでした・・・)ちなみに当日コンサートでは限定Tシャツが発売された模様。
    blacksabbath_tt

    さらに後日、コンサート参加アーティストのサイン入りギター、今回参加できなかったアーティストのサイン入りアイテムがチャリティー・オークションに出されるとのこと。

    Facebookより(2014-01-18)

    【追記】
    当日のセットリストは下記のとおりだった模様。

    01. Cornucopia (Intro)
    02. Supernaut
    03. Children of the Grave
    04. Symptom of the Universe
    05. Iron Man
    06. N.I.B.
    07. Electric Funeral
    08. National Acrobat
    09. Lord of this World
    10. Tomorrows Dream
    11. Changes
    12. Sweet Leaf
    13. Into the Void
    14. Killing Yourself to Live
    15. Paranoid
    16. Hole in the Sky
    17. War Pigs

    TakeMyScars.com(2014-01-21)

    ブログランキングに参加しています。
    応援クリックをヨロシクお願いします。

    関連記事
    ロバート・トゥルージロ、ブラック・サバスのトリビュート慈善コンサートに参加

      このエントリーをはてなブックマークに追加
    2014年1月17日(金)カリフォルニア州オークランドのオークランド・メトロ・オペラハウスにて、ロブ・フリン&フレンドをヘッドライナーとした慈善コンサートが行われ、ロバート・トゥルージロがブラック・サバスのトリビュート・オールスターバンドのメンバーとして加わるとのこと。このオールスターバンドにはスレイヤー、マシーン・ヘッド、テスタメント、エクソダス、スーサイド・サイレンス、デス・エンジェル、フォビドゥンらが参加予定とのこと。

    blacksabbath_tr

    Facebookより(2014-01-14)

    もう同窓会じゃないのかってくらいいろいろ集まってますね。
    チケット購入はこちらから。
    http://tktwb.tw/1gEYtHj

    他のメンバーは参加しないのかしら?

    ブログランキングに参加しています。
    応援クリックをヨロシクお願いします。

    関連記事
    ロバート・トゥルージロが手がけたショートアニメ『'Tallica Parking Lot』がネット流出
    BURRN!12月号にラーズ・ウルリッヒ&ロバート・トゥルージロのインタビュー掲載
    フリーペーパー「FLJ」にてロバート・トゥルージロのインタビュー掲載

      このエントリーをはてなブックマークに追加
    ブラック・サバスの再結成+メタリカのブラック・アルバム再現の2つをぶち上げて話題になっている今年のDOWNLOADフェス。(ビル・ワードは離脱してしまいましたが。。)

    そんなDOWNLOADフェスの公式サイトに「LIVE ON AIR」赤いランプが点灯してます。これも生配信への布石か!?
    download

    DOWNLOADフェスは前回お伝えしたNOVA ROCKと日程的に重複しますが、メタリカの出演は2012年6月9日にDOWNLOAD、10日にNOCAROCKというスケジュール。
    現地時間20:45から開始ということなので、もし生配信されれば日本時間では2012年6月10日(日)朝6:45からということに。

    【訂正】
    またやっちまいました。。朝4:45の間違いでした!><
    ※とにかくヨーロッパの夜は日本時間にすると朝が早い。。

    NOVA ROCKもDOWNLOADフェスも日本時間9日の朝の状況で配信有無・視聴可否がハッキリしそうです。

    メタリカ主催のOrionフェスも先日のRio中継をOrionフェスの公式サイトで行ったことで俄然、生配信の可能性が高くなってきました。こちらも後日記事化する予定です。

    めたりゅかさん、情報提供ありがとうございます!

    【追記】
    ちなみにKerrang!最新号はDOWNLOADフェス特集ということでジェイムズが表紙の一人として登場してます。
    kerrang_download

    【追記】
    更新遅れました。
    9日朝に確認しましたが、、、、
    60秒ごとに更新される遠景カメラ以外は特に配信されず。。。
    download_2012

    残念ながらリアルタイム配信はなさそうです。。。
    期待させてしまって
    suman

    【公演後追記】
    以下、当日のセットリスト。

    01. Hit The Lights
    02. Master Of Puppets
    03. For Whom The Bell Tolls
    04. To Hell And Back
    05. The Struggle Within
    06. My Friend Of Misery
    07. The God That Failed
    08. Of Wolf And Man
    09. Nothing Else Matters
    10. Through The Never
    11. Dont Tread On Me
    12. Wherever I May Roam
    13. The Unforgiven
    14. Holier Than Thou
    15. Sad But True
    16. Enter Sandman
    17. Battery
    18. One
    19. Seek And Destroy


    ブログランキングに参加しています。
    応援クリックをヨロシクお願いします。

    関連記事
    メタリカが参加するNOVA ROCK 2012がネット配信されるかも。
    メタリカ出演のロック・イン・リオがYouTubeで観られるかも。

      このエントリーをはてなブックマークに追加
    来年2012年6月8日から10日までイギリスのドニントン・パークで行われるダウンロード・フェスティバル。既報どおりブラックアルバム完全再現のメタリカとオリジナル編成のブラック・サバスが参加するわけですが、その主催元からさっそく「煽り動画」がアップされました。



    ちなみにメタリカは6月9日、ブラック・サバスは6月10日のトリを務めます。
    download2012metsabbath

    あぁ行けるもんなら行きたい。。

    ブログランキングに参加しています。
    応援クリックをヨロシクお願いします

    関連記事
    メタリカが2012年のダウンロード・フェスティバルでブラックアルバム完全再現

    このページのトップヘ