※先入観を持って『Hardwired...To Self-Destruct』を聴きたくない方は、この記事を読まないことをお勧めします。

メタハマこと『METAL HAMMER』誌のメインライターである辛口評論家ドム・ローソンが『Hardwired...To Self-Destruct』のレビューをしていました。管理人拙訳にてご紹介。

ro1216-Website-Cover-Metallica

多くのメタリカファンは、比較的好評だった2008年の『Death Magnetic』の次作を待っている間、熱っぽい期待と新譜を前にしての緊張状態で混ぜこぜになっていることだろう。10年近くかかったこのアルバムの胎動を追いかけると、メタリカはいずれかの音楽的方向性を表明するのには乗り気ではないことを示唆している。2014年の仰々しく長い「Lords Of Summer」の出現は、いずれも楽観的観測を養うまでには行かなかった。しかし2016年は、すでにこれまでで最大のヘヴィメタルバンドにとって素晴らしい年だ。少なくともこの夏に聴くことが許された2曲は、ほとんどの人たちにとって、ブラックアルバム以降リリースしてきたメタリカのなかで同じくらい良いものだと考えているからである。嬉しくも良いニュースはそこで終わらない。なぜならそれは完成にはほど遠く、88分という素晴らしい1時間半は長すぎるからだ。『Hardwired...To Self-Destruct』は、この25年間でメタリカの最強アルバムだ。

タイトルトラックで幕が開く。メタリカがこのようなものをやるには歳を取りすぎていると考えていた者を黙らせる、魅力的なコーラスと十分な魂と毒を併せ持つ凶暴ではち切れんばかりの最高のスラッシュナンバーだ。『Death Magnetic』収録曲の大半のような醜いプロダクションと気が散るだらしなさとは対照的に、『Hardwired...To Self-Destruct』は精密でブルータルだ。ラーズはかなり練習したのかもしれないし、コンピューターにどうにかしてもらったのかもしれないが、メタリカのサウンドは彼らがこの10年やってきたものよりも、あの『Master Of Puppets』の圧倒的なマシーンに近い。同じことは「Moth Into Flame」にも言える。80年代のバンドの栄光と強い繋がりを示す、それでいてルーツに戻った中途半端な試みのように聴こえることもない、怪物のような本物のヘヴィメタルの曲だ。





実際、このアルバムの1枚目のほぼ全曲は同じスタンダード曲で、それが最も顕著なのが、メイデンに敬意を表した魅力的なギター・ハーモニー、NWOBHM崇拝の強い名残りとカーク・ハメットの猛烈なソロを持つ「Atlas, Rise!」だ。'Die as you suffer in vain!/Own all the grief and the pain/Die as you hold up the skies/Atlas, rise!’とヘットフィールドが咆哮する。音楽はともかく、彼が最近売り歩いてきたようなぎこちない自己啓発のような無駄口ではなく、あのような歌詞をあのパパヘットが歌っているのを聴くのは信じられないほどスリリングだ。同様にゆっくりと燃え盛る、ブラック・サバスが注ぎ込まれた「Dream No More」の脅威は、輝かしいほどグロテスクだ。クトゥルフ神話は1984年からメタリカのアルバムに登場してきているが、この曲では‘inhaling black skies’とヘットフィールドが歌詞を紡いでいる。



『Hardwired...To Self-Destruct』の欠点は2枚目にある。凄まじい締めの曲「Spit Out The Bone」は別にして、『Load』以降のどのメタリカのレコードでも悩まされてきた同じ問題で苦しめられる。つまりそれは自己編集の欠如だ。いくつかの素晴らしいリフはさておき、「Confusion」「Am I Savage?」「ManUNkind」は長すぎて、鋭いダイナミクスに欠けている。「Here Comes Revenge」は良し悪しある束のなかで最高だが、緊張感のなさに言及しなければ、忘れられがちなレミーのトリビュート曲「Murder One」の方が良い。

しかし、否定的なものは本当はどうでもいい。最高のニュースは『Hardwired...To Self-Destruct』は、ほとんどの部分で「これぞメタリカだ!」と思える素晴らしい曲と無数の瞬間を持つ強力なメタルレコードということだ。これらの曲をライヴで聴きたいとさえ思うかもしれない。最も重要なのは、耐えがたいほどの8年間の待ち時間はそれだけの価値があったという救いを感じることだろう。

TeamRock(2016-11-02)

前作までのぶった切り方が凄まじいですが、そんな彼をしてもブラックアルバム以降で最高との評価でした。正直、他人の評価はどうでもいいんですが、未聴のアルバムに対していくつか示唆的な部分があり、早く聴きたいとの思いが強くなる管理人でした。

ブログランキングに参加しています。
応援クリックをヨロシクお願いします。

関連記事
英「METAL HAMMER」誌の25周年記念号でクリフ・バートン特集
ラーズ・ウルリッヒが「Metal Hammer」で語るもろもろのこと。
METAL HAMMER誌でメタリカ&『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』特集
英HR/HM雑誌「METAL HAMMER」でメタリカ表紙&特集