RollingStoneにて、メタリカが先ごろ自身のブランドで出したウイスキー、「Blackened Whiskey」について語ったインタビューが掲載されました。管理人拙訳にてご紹介。

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ラーズ・ウルリッヒはメタリカの評判については心得ている。「当時のメタリカは「Alcoholica」って感じで俺たちの飲酒の習慣についてはいろんなことがあった。でも白いラベルのビールだとかウォッカ以外のものを飲むだけの金はなかった。『...And Justice For All』やブラックアルバムを制作するためにLAに行って、ウイスキーやジャックダニエルに触れるまではね。ウイスキーは、俺たちが次の段階に進んだものだった。」

今、バンドが飲酒の習慣を劇的に減らしていった後にウイスキー事業に参入している。約1年半前、彼らは「Sweet Amber Distilling Co.」(訳注:Sweet Amberはもちろん『St.Anger』収録曲のタイトル。distillingは蒸留を意味する。)を立ち上げ、北米のバーボン、ライ・ウイスキー、ウイスキーのブレンドを黒いブランデー樽で仕上げた「Blackened」を最初にリリースした。ドラマー(ラーズ)によると、商品販売の延長として「聴衆とつながる」新しい方法を見つけるため、ウイスキー事業に参入すると決めたとのこと。

彼らの主な懸念とは?ウイスキーは「お年寄りの飲み物」だった。「自分が本当に若かった頃には、違う世代のものだと感じていた。」とウルリッヒは語る。「21、22歳の誰かが親父や爺ちゃんの飲み物じゃないと感じたら、それが「Blackened」だと思っているよ。」かつてWhistlePig(ホイッスルピッグ)で蒸留と化学の専門家を務め、Maker's Mark(メーカーズマーク)で働いていたデイヴ・ピッカーレルと組んで、ウイスキーを「メタリカ化」するのに一役買った。

ウルリッヒは語る。「誰かと一緒にウイスキーを作って、メタリカのラベルをペタッと貼るビジネスに出たいなんて思ってなかったよ。俺たちは目の前でファンを見ることができるってことが重要だと感じていた。「これは最初から始まっていたことだ。少なくとも、良かれ悪かれ、メタリカが感知していることかどうかだ。」」

ボブ・ディランからハンソンまで、自分たちのブランドのアルコールに踏み出したことで、メタリカはBlackenedで自分たちの印をつける独自の方法を見つけ出した。ウイスキーの熟成工程のスピードを上げるために他の蒸留所が、ピッカーレルが語るところの「樽をハッピーにさせる」音波を使用するなか、Sweet Amberは、樽を振動させることによって香りを高めるために「Black Noise」と呼ばれる低周波を使うという特許申請中の熟成工程を開発した。もちろん(使うのは)メタリカの楽曲だ。

ロバート・トゥルージロはRollingStone誌にこう語った。「俺はいつも最初は懐疑的なんだ。それから何であろうと勉強して試してみる。そういうプロセスを経なければならない。5ヵ月くらい前に、このプロセスを経て納得したんだ。」彼はこのプロセスを「マッシュ・ピット」と呼ぶ。「音と振動に何らかの形で混ざった分子構造があるから」だ。

特許出願中のため、ピッカーレルはプロセスの説明には消極的だ。しかし彼はブランデー樽には多くの化合物が含まれる木材が使われていることを明らかにした。「表面近くは木のカラメルだから、樽を燃やすと焦げができて焦げたすぐ裏を赤い層と呼んでいるんだ。」と彼は語る。「それは木の糖質がカラメル化するのに十分なほど熱くなるけど、燃えるほどにはならない場所なんだ。焦げた下にはカラメルがたくさんあるので、私がやっているのは、木のカラメルをさらに引き出すこと。木の間膜が壊れると、バニラのような味と香りの6つの化合物が形成される。そのうちの1つは実際のバニラなんだ。ウイスキーと(使用している樽の)木材との相互作用を音の振動によって高めることができれば、ウイスキーが木材からさらなる美味しさを引き出すことができる。」最終的に、飲み物に深いカラメルの音色を与えていると彼は言う。

彼はそれを証明しようともしている。「ウイスキーの色にインパクトを与えているという色彩比較データを提示することができる。特許を取ったらすぐに科学的なデータを公開するよ。」と彼は語る。

ピッカーレルは陸軍士官学校に通っていた頃、この工程にインスピレーションを得た。彼は学校の教会の受付係になり、オルガン奏者のデイヴィス博士と親しくなった。長年に渡ってそこにいたオルガン奏者は楽器に増築を加えて、今や23000以上のパイプを有するものになっていた。ある日、デイヴィス博士がピッカーレルにプライベートコンサートを開き、バッハのトッカータとフーガニ短調(オペラ座の怪人を思い浮かべてみよう)を弾いて、楽器のフルパワーを実演してみせた。最も低い音を弾いた時、16ヘルツで振動したことをピッカーレルは思い出した。「振動を数えることはほぼできるだろう。腸が揺すられるんだ。」とてもパワフルで、デイヴィス博士があまり長く演奏しすぎると建物が傷つくことになるだろうと言っていたのを思い出していた。

「ただ魅了されたよ」と彼は言う。「だからこのプロジェクトに参加したとき、自分は「今、これで遊ぶ時が来た」って言ったんだ。」バンドがライヴで使用するサウンドシステムの機材を創っていたメイヤーサウンド(Meyer Sound)と協力して、トゥルージロがギターケース(あるいは彼が呼んでいるように棺)になぞらえた巨大な超低音域用スピーカーに取り組んでいることをピッカーレルは知っていた。

これらの機材で、4人のメンバーが作成したプレイリストに基づいて、メタリカの楽曲から超低周波を樽に向かって再生するのだ。「クリーンで鮮明なリズムがこの(熟成)工程を手助けしているけど、低周波音で樽を響かせるだけでその効果が得られると確信している。でも、これによって響かせることでより一層大きな効果をもたらすよ。」

ウルリッヒはこう話す。「俺たちは超低周波での超低音についてのことを話しているんだ。路上で誰かの隣で運転している時に、車から超最高な重低音が出てくるのを、聞くというより感じることができるでしょ?可聴周波数以下の音が実際に空気と分子を動かすからなんだ。」

最初のプレイリストにはバンドの各メンバーが選んだ曲が含まれていた。ファンはバッチ番号を参照して、プレイリストを聴くことができる。ウルリッヒの選曲は「Sad But True」「One」「The Outlaw Torn」「Broken, Beat and Scarred」が含まれていた。彼は言う。「完全に衝動的なものだね。この選曲には何の理論だった体系もない。俺はいつも「Broken, Beat and Scarred」は他の曲よりも下に評価されていたけど、ウイスキー用語で使って、違った熟成をしてきたと感じている。ライヴで「Sad But True」をやるのが好きだ。好きな曲のひとつだし、「One」もそのひとつ(「One」)だし、「The Outlaw Torn」もそうさ。」

オジー・オズボーンのバンドでベースを務めていた時に「Whiskey Warlord(ウイスキー将軍)」というあだ名をつけられたトゥルージロが選んだのは、自身がメタリカに加入する前の曲で「Frayed Ends of Sanity」「Fight Fire With Fire」「Orion」「Disposable Heroes」だった。「自分は「Disposable Heroes」みたいなベース主導のものを選ぶ傾向があった。鼓動があるからね。」と彼は語る。「鼓動とビートの周りを分子が動いていると想像しているよ。ドラムとグルーヴのことを考え、美しさとダイナミクスを考え、それをアートワークのように考えている。それはまさにひねくれたやり方での俺なんだ。」

ピッカーレルはうまくいったやり方に満足している。彼の味覚によれば、ブランデーの仕上げのためのドライフルーツの覚書とともに「豊潤でコクのあるウイスキー」だと言う。最近はモルトウイスキー団体に試飲のウイスキーを持ち込んで「スコッチウイスキーの雑誌から出てきたようなお年を召した紳士」から親指を立てて賛同を得た。その人は香りを嗅ぎ、色をよく見て、味わった。「彼は厳しい人のように見えた」とピッカーレルは言う。「彼はそれを噛んで味わい、空気を含ませ、それが終わると、私を見てこう言ったんだ。「正直言って、私はかなり驚いている。これは本当に美味しい。」OK、ダメじゃないと言っていたわけだけど、私はこの方が、その容貌のように私に苦々しい顔を私に向けると予想していた。反応は上々だよ。」

バンドからRollingStone誌に送られたサンプルは軽い口当たりと甘い味がしており、ダブルベースの「One」の刺激に揺さぶられると考えると驚くほどなめらかだった。後味もあまり残らない。「この味を説明するのに「earthy(気取らない)」という言葉を使いたいね。」とトゥルージロは言う。「ちょっとした刺激がきて、少しなめらかで、よりバランスが取れているところが好きなんだ。」

まだ(競合他社には)音響的に広まっておらず、「ペプシチャレンジ(飲み比べや比較広告で他社との優位性をアピールする戦略)」を行っていないウルリッヒも賛同する。「味は軽くて、自己主張が強い。とても現代的なんだ。そう、温かみがあってね。大きな氷を入れて少し冷やしたのが好きだね。」

「少しずつチビチビと飲むんだ。」と彼は言う。それはかつて「Alcoholica」として知られたバンドのドラマーとはほど遠いコメントのように聞こえる。「とても飲みやすいよ。」

RollingStone(2018-09-16)

メンバーが樽に聴かせる曲として何を選んだかは、こちらのサイトで確認できます。それぞれSpotifyやApple Musicのプレイリストとしても参照できるようになっています。(プレイリストは逐次更新中)




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