メタリカのマネジメント、Qプライムのクリフ・バーンスタインが、ストリーミングによる音楽業界への影響やアーティストを売り出す手段などについて語っていました。管理人拙訳にてご紹介。

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メタリカのマネージャー、ピーター・メンチ(左)とクリフ・バーンスタイン(右)
−ストリーミングによってあなたがアーティストのために働くやり方にどんな影響がありましたか?

間違いなく、我々は統計的なことを気にしているし、とても負けず嫌いだ。No.1のレコードを持ち、ラジオでたくさん曲がかかり、最大限の観衆に届けたいと思うのと同じように、できるだけ多くのストリームを生み、できるだけ多くのプレイリストを作成している。ダウンロード販売絶頂の頃、我々はiTunesと仕事をしていた。そして今はApple MusicとSpotifyで同じことをしている。媒体は変わるかもしれないが、同じアプローチを取っているよ。

私はビニール盤、8トラック、カセット、CD、ダウンロード、そして今はストリーミングと多くのフォーマットを経るほど歳を取った。そしていつも同じことをやっているのだ。素晴らしい才能をみつけて、それを扱うレーベルをみつけ、ツアーをたくさんやって、できる限りの最高のレコードを作るよう後押しする。35年間これらのことを全てやってきた。(音楽を)届ける方法が何であるかに関わらず、これからも続けるだろう。

ストリーミングでは、いつでもたいていは最もストリームされた50曲のうち49曲はヒップホップから成っている。大げさかもしれないが、盛りすぎでもない。でもSpotifyだけで約10億以上のストリームを誇る8組のアーティストがいる。それはつまり、我々が担当するバンドはたくさんの曲が好きな大ファンを抱えているというかなり良い指標でもある。ヒップホップのアーティストはいないが、我々はそれで満足だ。

覚えておいて欲しい。アメリカは我々が担当するアーティストの世界的な売上げのわずか3分の1に過ぎない。例えば、ラテンアメリカには実際にレコードを購入したことが一度もなく、ストリームで聴いている人たちがたくさんいるんだ。


−あなた方が担当するアーティストは公平なストリーミング収入を得ていると思いますか?

もちろん「公平」は客観的な指標ではない。ある人の「公平」は別の人からしたら「不公平」だ。メジャーレーベルと契約を結んだアーティストの多くは、ストリーミングがたくさんの契約のもとでシングルトラックの売上げと同じように扱われているために実際には公平な分け前を得ていないと言えるだろう。

パイ全体(を見直すこと)から始めなければならない。ストリーミング会社によって生み出された収入を取り出し、そこからその分け前がレーベルに払い出される。その割合はとても高かった。でもその割合を3%程度カットしたとしても膨大な金額になる可能性がある。我々が物理的な製品で長年に渡って抱えてきた卸売価格や小売価格に相当する比率からすれば、総額は公平だと言える。デジタルダウンロードでも売上高のほぼ同じ割合がレーベルに行っていたんだ。

しかしストリーミングのビジネスモデルは、Spotifyがまだ十分な利益を上げていないために、その全てをレーベルに払っても本質的に大儲けとはいかない。だからストリーミング会社にとってそれは公平だろうか?SpotifyはApple Musicと同じく不公平だと言うかもしれない。私の見解では、アーティストがSpotifyからレーベルに入ってくる収益の15%しか得られないのであれば、公平ではないように思える。何があるべき割合なのか正確なところは私にもわからない。場合によるだろう。あるレーベルはアーティストのためにほとんど全てを行っている。一方で他のアーティストにはほとんど何もやっていない。事実、音楽界がストリーミングに完全に基づいているなら、レーベルは製造と流通のコストがほとんどかからず、アーティストが15%を得て、残りの85%をレーベルが得ても私からしたら公平ではないように思える。


−ツアーは、特にロックバンドにとって、演者の成功のために重要な役割を担ってきました。しかし、自身のツアーを行うか、フェスティバルの出演回数を増やしていくか、ラジオ局コンサートを行うか、いずれかを選択しなければならないとしたら、あなた方が担当するアーティストにとって最善のものをどのように把握するのでしょうか?

(笑)人生は複雑だね。我々は歳を取っているので、そこまで単純にはいかない。我々を手助けする多くの人材を雇っているが、パートナーのピーター・メンチと私は、いまだにここで最終的な決定を下すことに主要な責任を担っている。我々はこれまで以上に多くの策を練る必要がある。全ての可能性をはかり知る必要があるし、それぞれ個々のアーティストにとって正しいことを各段階で実行する必要があるんだ。それは時にオファーを断らなければならないことを意味する。それは一部の人たちを不幸にさせてしまうだろうが、アーティストが行くべき場所へのビジョンを維持しなければならない。その時にはたとえどんな金銭的対価だろうと貫き通さなければならない。

大局的・長期的に考えると、フェスティバルに出演することで、3つか4つの違う都市でヘッドライナーを務めることができなくなるかもしれないから、時にはフェスティバルの良い日取りを自ら進んで諦める必要がある。

統計的には、少なくともロックミュージックでは、この50年の間のどんな時よりもヘッドライナーは少なくなっている。もしそうであるならば、なぜなのか訊ねる必要がある。ロックは以前ほど人気がなくなったのか?そうなのかもしれない。でもフェスティバルに参加することによって、人々が特定のバンドを見に来るのではなく、単に(フェスという)環境そのものの一員になりに来ているのも事実かもしれない。フェスティバルやラジオショーの一員として、さまざまなアーティストのヒット曲を聴くだけで楽しい時間を過ごすために来ている場合、そこからどのようにファンになってもらえるだろうか?どうやってファン層を構築していくだろうか?これらは全て主観的な質問であり、それぞれに答える新しいアプローチを考え出す必要があるね。


−もしあなたがツアーをブッキングしなければならない場合、特定の市場で新たなオンエアをフルに生かすためにどのような日取りをブッキングするのでしょうか?

それはアーティストによるよ。メタリカ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ミューズがどれだけ前もってブッキングされているか話そうか。彼らの観衆はどこにでもいる。いわば「ユビキタス」的な存在だ。彼らのために前もって何年も前からブッキングしなければならない。利用可能な建物やスタジアムはたくさんあるけど、同時にスポーツチームや他の主要なイベントでもブッキングされるからね。

でも比較的新しいイギリスのバンド、フォールズ(Foals)ぐらいの知名度ならば、より短期間でもっとターゲットを絞り込んだ小さな会場をブッキングすることができる。半年や1年前に前もってブッキングする必要はない。フォールズはすでに世界的な存在になっているから、イギリス、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパのフェスでやる期間を決めなければならない。

腰を据えて、1年から18カ月前までの期間を把握しなければならない。でも必ずしもアメリカの各都市で先にブッキングする必要はない。我々にはまだもっと多くのオンエアをしている市場にブッキングするという贅沢がある。ブッキング過程における佳境はプロモーションのチームが我々に意見を伝えた後なんだ。彼らは数と統計を見て、特定の市場における観衆がそのアーティストや曲について実際にどう感じているのか、そのアーティストがラジオ番組のコアになれるのかといった定性的な情報を提供してくれる。

我々が誰かを連れてライヴをやるとなったら、その全てを考慮に入れる。2ヶ月で35回公演しか行えないかもしれないが、選択肢は60から90の市場のなかからだ。そこから最良の35の市場を考慮する。低いランクの市場を含むかもしれないが、その市場においてバンドの観客動員の可能性をより多く持ったところをね。聴衆に届くのに早すぎるってことはない。バンドとともに成長できるように早めにバンドを観て欲しい。そしてそうするには、バンドを早く自分の流れに乗せて、ある程度の関心を抱かせる必要があるね。


All Access(2018-01-30)
何年も前からブッキングするということですが、2019年と噂されるメタリカの来日公演も具体的に動いているのでしょうか。。。

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