カーク・ハメットがAlternative Pressのインタビューのなかで自身が開発するギターペダル、新譜制作におけるラーズとの関係やプロデューサー、果ては新たな映画製作についても語ってくれました。管理人拙訳にてご紹介。

Kirk-Hammett

−ギタリストにとってシグネチャー・ペダルをリリースすることは特別なことではありません。しかし、あなたの場合、ペダルは特にギターソロにおいてあなたのサウンドならしめる一部となっています。この新しいペダルが他のものとどう違うのか教えてください。

これはKHDKディストーション・ナンバーワン・ペダルと呼んでいる。マイクロ・アンプと呼ばれる業界水準のものがあって、それに必要な期待に沿うものが提供できたと思う。でも俺はいつもマイクロ・アンプのコンセプト、ディストーション・ボックスのコンセプト、それをひとつのペダルに詰め込んで、整えて使いやすくするのは素晴らしいことだと思ってる。それが「Ghoul Screamer」みたいな業界水準の増強版なんだ。

−私の唯一の不満は、これは「Ghoul Screamer」(直訳:残忍な金切声の人)なんていう名前じゃないかなということです。

わかってるよ!他の全ては「Ghoul Screamer」の精神により近い名前なんだ。「Ghoul Screamer」って名前を付ける前は、ディストーション1って名前にしてたんだよ。

−あなたのシグネチャー・アンプとギターとペダルのデザインはどんな過程を経たんですか?

俺たちはまだ存在していないけど必要とされているものを作ろうとしている。誰もやっていなかったことをやってみたいと個人的に思っていた。俺の目標はチューブ・スクリーマー、ワウ・ペダル、ワーミー・ペダル、フランジとかそういう新たな業界標準となるようなクールでユニークな何かに巡り合うことだね。もしプロトタイプが俺の顔をニヤけさせて、腰を据えて深く入り込みたいと思ったら、手ごたえありだ。他の誰かが何か新しいものを提供することなくやったものをなぞったものだとしたら、俺には興味がない。今や会社を始めたり、流通や宣伝したりなんてことは、オンラインの助けを全部借りてずっと容易くなった。この指先でもってね。こういうことしたっていいだろ?今はずっと便利になったんだから。

−私は多くの素晴らしいバンドのように2つの素晴らしいものを組み合わせるというアイデアが大好きです。メタリカがダイアモンド・ヘッドとモーターヘッドにひねりを加えた組み合わせであるように。

まさにそれだね。俺はクールな音楽でみんなを興奮させたり触発させたりしてみたいんだ。うまくいけば、誰かが俺たちが作りだす音楽とは違う、俺がすぐにでも聞きたくなる音楽を作ることになるかもしれない。レコード会社を始めるように、ペダルの会社を始めることには保証された結果なんて何もない。でも、楽しもう、クールなものを作ろう、俺たちがやっていることで誰かをハッピーにしようってことなんだ。それが俺のアティテュードさ。インターネッツはみんなを引き合わせるクソ素晴らしいものだ。だから盛大に集まって、クレイジーなペダルでクールな音楽を作ろうってわけ。

−映画『Some Kind Of Monster』であなたはメタリカの楽曲にギターソロを残すべきだと主張していた時、(映画が出品上映されていた)サンダンス映画祭の観客たちはあなた側について声援を送っていました。あなたは最近、何度も繰り返しギターを演奏することにぞっこんだと話していますね。

自分がギターを演奏している時の多くは競争心からなんだ。本気でやる。攻撃的にね。過去数年間に渡って続いていた(バンドメンバー間の)心理的な問題に対処するのに、俺は感情的なレベルで自分の楽器と再び繋がることができた。セラピーを受けて、よりオープンで傷つきやすいことを学んで、自分がもっとオープンなやり方でプレイしたらどうなるんだろうって思ったんだ。それからこういったことがあふれ出し始めた。俺が最初にプレイした時、俺はオープンで傷つきやすいってだけだった(笑)それくらいしか知らなかったからね。できうる限り学びたいと思ったんだ。目の前にある何かについて俺は一方的な判断はしてこなかった。演奏が何百万の他のことで埋もれてしまっていたあいだ、完全にオープンになる感覚になる前に短い時間で腐るほど多くのことを学んできた。オープンな方法でギターを演奏するという再発見は俺にとって素晴らしい効果があった。自分の演奏に信頼度が増した。最近は本当にその恩恵を受けているよ。

−メタリカの熱狂的なファンはソロにおいてあなたとラーズ・ウルリッヒのコラボがいかに緊密であるかを知っています。新たに見出した信頼は、メタリカの新しいアルバムの楽曲制作において、あなた方2人の間のダイナミクスを変えましたか?

今この瞬間もアイデアが浮かんでくるような感じがする。どう演奏しようか10か12のアイデアで臨むんだ。赤い光がパッとついて、バッキング・トラックがものすごく魅力的に聞こえて、突然、気分が変わって「今はこう演奏したい!」ってなるんだ。ラーズがいなくて俺に提案みたいなことをしてくれていなかったら、ギターソロは全部、ジミ・ヘンドリックスとマイケル・シェンカーの間を行ったり来たりしているようなサウンドになっていただろうね。冗談を言ってるわけじゃないよ...(笑)ラーズは俺自身ではわからない客観性を示してくれるんだ。俺には強迫観念があるからラーズの指摘が必要なんだ。アイデアが尽きたことはない。時折、10の優れたアイデアのうち最高のアイデアを選ぶのが難しくなるくらいさ。2時間部屋にいなかった誰かが入ってきたら、そいつが何が最良かより多くの視点を示すことになる。ラーズはそういうことが得意なんだ。それにそういうことをするのが好きなのさ!ぶっ飛ぶよ。彼はドラマーでありながら、俺のリードギターの演奏にも入り込んでいるんだ。


−あなた方はスタジオ入りしていますが、まだ公式にプロデューサーを発表していませんね。

俺たちはグレッグ・フィデルマンともうかなりのことをやっている。彼はミキシングをしている。最終的にどうなるか俺にはわからない。誰か(他の)プロデューサーを入れてはいないし、今さら誰か連れてくるとは思えないな。


−私の理解するところでは、フィデルマンがエンジニアとして働く場合であっても、非常に不可欠です。プロデューサーのなかにはただあちこち顔を出すだけという人もいますが、彼は気合いが違います。

「プロデューサー」って肩書自体、ちょっと曖昧なんだよね。人それぞれ違う。リック・ルービンをプロデューサーと呼べると思うけど、彼はあらゆる音のためにずっとスタジオにいるようなボブ・ロックみたいなタイプのプロデューサーじゃない。同時に、リック・ルービンには物事を成すやり方がある。グレッグ・フィデルマンは、エンジニアと共にいつもプロジェクトを前進させようとしているという点で違ったタイプのプロデューサーだね。ドクター・ドレーのようなバッキング・トラックを実際に作っているタイプのプロデューサーとは違う。ヒップホップの世界ではドレーはプロデューサーだ。とても曖昧なんだよ。もし伝統的な用語として使うなら、グレッグと俺たちがやっていることはかなり「プロデューサー」していると言えるんじゃないかな。

−彼は怠け者とは違いますからね。『Death Magnetic』を手がけましたし、スレイヤー、ブラック・サバス、スリップノット、システム・オブ・ア・ダウンのプロデューサーやミキサー兼エンジニアとして働いていました。

アデルの最初のレコードも手がけてるんだぜ!彼は全てのことをやっているんだ。グレッグと一緒に仕事をするのは本当に楽しい。ちょっと現場監督っぽいところはあるけど、人の話に耳を傾ける。彼はとても柔軟性があるよ。彼は人を怒らすことなしに服従させる術を知ってるんだ。


−あなた方全員にやるべきことがたくさんある時には、それは重要ですね。あなた方にはひっぱっていくリーダーが必要です。

もしグレッグにメタリカのレコーディングで最も難しいところは何ですかと問うたら、彼はメンバーのスケジュール管理だと言うだろうね。まぁ俺たちにとって、人生には各々課せられたものがある。俺たちはアルバムを作り、ツアーに出て、バンドとして努力するけども、俺たち全員にはそれぞれ家族がいるから、それをどんなことよりも優先する。それが何で(アルバム制作に)時間がかかっているかの理由のひとつなんだ。それがグレッグ・フィデルマンにとっての障害になっている。彼はいつもそれについて冗談めかしているけど、タップダンスとジャグリングをやるかのように本当に時間がかかることなんだ。

−メタリカのメンバー全員が『Through The Never』で映画プロデューサーとなった事実、そしてあなたの情熱と興味を考え合わせると、映画を演出したり脚本を書いたりというロブ・ゾンビのような道をたどることは考えたことはありませんか?

あぁもちろんだよ!俺は映画を作りたい。誰かがそれだけのお金を払ってくれたら、すぐにでも映画を作るよ。俺が映画製作で学んだことのひとつが、誰かにお金を払ってもらった方がずっと良いってことだ(笑)。3000万ドルくれたまえ、俺がイカした映画を作ってしんぜよう!キミに何回でも言うよ。今月、俺は脚本を書き始めた。それが良かろうが悪かろうが、それは知っておいてもらおう。

−ロバート・トゥルージロは自分のお金をジャコのドキュメンタリーにつぎ込んでいますよね。

俺がやらなきゃならないことは湯水より金を持っている誰かさんを見つけることだけだ。そんな人たちに自分たちがどうしていくのか熱弁をふるうんだ。俺がやりたかったこと、そして今しばらく話してきたことだけど、実際に腰を据えてやり始める予定を入れている。俺はイカした物語を持っていると思うし、今月実際に脚本を書いているヤツと取り組んでいる。彼は脚本家なんだ。彼は年に約1本は脚本を書いていて、そのほとんどが映画化されている。俺は彼と腰を据えてやるつもりだ。実際に映画になったり、一本の脚本になったりする保証は何もないよ。でも俺は間違いなく挑戦するつもりだし、草分けになってやろうと思うんだ。

Alternative Press(2016-03-14)

訳しながらカークの創造エネルギーが楽曲制作以上に高まってるのを感じていました。楽曲制作時のラーズとカークの関係性も知れて興味深いインタビューでした。

ghoul_screamer
KHDK Electronics / Ghoul Screamer


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