マネジメント会社Qプライム創業者でメタリカのマネージャーでもあるピーター・メンチが、2014年にBBCで行われたインタビューで昨今の音楽業界について語っています。BLABBERMOUTH.NETさんの文字起こしを管理人拙訳にてご紹介。

petermensch2014

−レコード業界は、この30年で変わってきた

まぁビジネスモデルは間違いなく当時は素晴らしかった。たとえ数年稼げなかったとしても、ある程度の時間とエネルギーを投資していた。成功を収めたアルバムを出せば出すほど、レコードとアルバムの販売促進をしてくれるたくさんの人がいたわけだ。今やレコード・ビジネスは契約だ。レコードとストリーミングの売上げは落ちてきているし、そこで廻っているお金は少なくなっている。だから我々がやらなければならないことは、基本的には、我々のマネジメント会社を、ほとんどレコード会社と同じようなところまで(業態を)広げるということだった。さまざまな国の独立系レコード会社と取引し、その会社たちは我々のレコードを個別に取り扱うことができる。グローバルビジネスは砕け散りつつあるね。


−減少していくレコード売上げと、バンドをより長い期間ライヴツアーに出させることについて

以前がそうだったように、間違いなくツアーに出なくても十分なほどレコードを売り上げてきていたし、次のレコードを作ったり、あるいはレコード制作とツアーの両方をやる十分なお金があった。おそらく90年代までなんだが、レコード売上げと同じだけツアーで稼いでいたんだ。今やレコードやストリーミングの売上げは10分の1しか稼げない。新しいレコードを出していくというビジネスの最大の問題は、ファンが誰かわからないということなんだ。ファンは何かのために実際にお金を払ってくれる人たちだ。チケットを買ったりね。もはやアルバムにお金を払わないとしても私はあまり気にしない。どうしようもないということがわかっているからね。でもチケットを買わないというのは、本当にファンではないということだ。だから私のバンドはそこまでお金を稼ごうとはしていない。33歳の時は状況を鑑みて「この通りの先のサイモンおじさんのカーディーラーに加入する時が来た」となったかもしれないが。

−ヘヴィメタルのファンはどこに行ったのか

音楽の黄金世代は、60年代あるいは70年代、80年代、90年代だったろう。多くの人たちがやっていることは、大好きなライヴに通い続けるということだ。たまたまわかったんだが、さまざまな(イギリスの)議員が40代、50代でもヘヴィメタルのショーにまだ行っているんだ。私は首相を(アメリカのシンガーソングライター)ジリアン・ウェルチの公演で観たことがある。彼はレコードが好きだからね。だからもし音楽好きなら、未来でも熱中していることだろう。新しいレコードを買わないということはしないだろうね。

−今日のビジネス状況で新しいアーティストがブレイクするのは易しくなったのか難しくなったのか?

道はより困難になった。今日、コンサートに出かけたり、持っている1曲を観るために雨のなか、グラストンベリー(フェス)でぶらついたりすることを大事には思わないかもしれない。各アルバムを個別に買えるからね。だから私の仕事は、私が販促する興味のあるバンドが、アルバムのバンドであり、生涯ファンとなるようなバンドだと納得してもらうことなんだ。

−ハードロックの魅力と今後について

ハードロックの魅力はシンプルだった。私はそれがまだあると思っている。その魅力を持ち続けているクオリティを持つ新しいハードロックバンドがいないことを除いてね。ハードロックは魅力があった。基本的には、ニキビ顔で両親が嫌いで女の子にも好かれず不満の募っていた平均的な15歳の男性にとってね。そして驚いたことに、自分のような人たちが他に1万人もいたというわけだ。問題は、興味深いことにハードロックでは、我々はいつだってこう頼んでいるってことだ。新しいメタリカはどこにいるんだ?頼む、そこらに25歳以下のハードロックバンドで誰かいないか、私に連絡してくれ。我々はキミたちを必要としている。

−『This Is Spinal Tap(邦題:スパイナル・タップ)』(1984年)で描かれている音楽業界のパロディーはまっとうか

もちろん。ハードロックバンドと住んでたわけじゃないけどね。信じて欲しいのは、オルタナティヴ・ロック・バンドはあんな感じだったよ・・・対応してたのは面白かったけど・・・当時は同じように可笑しかったね。でも違ったやり方だった。

BLABBERMOUTH.NET(2015-07-03)

インタビューのフル動画はこちらから。


『スパイナル・タップ』は80年代当時の架空のバンド「スパイナル・タップ」が活躍する、バンドで起きそうないかにもなエピソードをふんだんに詰め込んだフィクション・ドキュメンタリー映画です。詳しくはWikipedia参照。

メタリカとピーター・メンチの出会いやピーター・メンチが語る当時のヘヴィメタルの置かれていたビジネス状況については関連記事からどうぞ。

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