世界最大の広告祭であるカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルに参加したラーズ・ウルリッヒ。パネルディスカッション後にBillboardにてインタビュー取材を受けました。管理人拙訳にてご紹介。

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ラーズ・ウルリッヒの最近お気に入りのフレーズ。

「Win-Win?いいよね。」51歳のメタリカのドラマーはカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルにて「音楽とブランド:文化速度の動き」と題されたパネルディスカッションでそう語った。

ウルリッヒは、パネリストのMACプレゼンツの代表、マーシー・アレンやCitiの国際エンターテイメント部門の副代表を務めるジェニファー・ブライトハウプトが働いているようなマーケットについてより頻繁に言及するのを敬遠している傾向がある。だがそれはウルリッヒがブランドの進むべき方向について無縁であるという意味ではない。ここ3年間で、バンドはSpotifyと初めてストリーミングの契約を結んだり、(7大陸全てで実際にライヴを行った初めてのバンドにさせた)南極コンサートのためにCoke Zeroと組んだり、自らのブランドに3Dコンサート映画『Metallica: Through The Never』を取り込んだり、2008年の『Death Magnetic』に続く、大変期待されている次のアルバムの潜在的なパートナーについて議論の扉をオープンにしたりしている。

Billboardは、いかにしてメタリカの遺産を享受し、ダニエル・デイ=ルイスのようなプロジェクトの合間の長期リフレッシュ休暇を避け、ナップスター後の音楽業界のなかで、ストリーミングのパートナーと協調していくのか尋ねた。

− Billboard
メタリカはもうすぐ結成35年になります。まだそういった節目に注意を払ったりしますか?

− ラーズ・ウルリッヒ
30周年が数年前だったか、3・4年前だったかだね。俺はよくわからなくなってきたよ。俺たちみたいにバンドを長くやっていると、何にだって記念日があるんだ。2011年に俺たちは30周年をファンクラブのためにサンフランシスコで1週間分のコンサートで祝った。でも注意しなきゃならない。昔の栄誉や過去やってきた事柄のために旗を振り続けているようじゃダメだ。将来を検討するのと過去を祝う適切なバランスを見つけるのは難しい。最近のロック界じゃ俺たちが長年に渡ってやってきた同じだけ、ほぼ何にでもお祝いを探すことができる。だからこの類のことを過剰に行うことは敬遠しているんだ。

− Billboard
カンヌライオンズのステージで、ブランドと共に働くことについてこれまで回答にしてきた「そんなのクソくらえだ」とは言いませんでした。考え方はいかにして変わったのでしょうか?

− ラーズ・ウルリッヒ
俺たちは今や間違いなくオープンになった。でも微妙だね。よりデカイ戦略だのマニフェストだのそういったものを満たそうとして、積極的にブランドを追いかけるようなことを俺は言わないだろうし。みんな俺が冗談言っていると思ってるけど、エンターテイメント業界のタウンページで俺たちが利用可能だと言えば、どう接触すればいいかはわかるわけだ。みんな俺たちをみつけられる。だから俺たちにやって欲しいことがあれば、マネージャーやレコード会社を通じて簡単に俺たちにアクセスできるわけ。岩場の下で、ダニエル・デイ=ルイスのように10年も隠遁して靴やら何やら作ったりして生きていくようなことはしない。俺たちは主に3つのタイプの試みに従事している。新しいレコードのリリースやら人々に届けたい何かについて俺たちに伝えられる時にやっている主なツアー、節目、新譜だ。これら3つのタイプの関係性を確保するためにより積極的な役割に身を置くことができるんだ。6年、いや7年間かもしれないが俺たちはそれだけ新しいレコードを出していない。数年前は映画をやった。俺たちはすぐに評価をしてこう言うんだ。「足りないのは何だ?」とね。大きく足りないところがなく、俺たちがやめられるとわかっていたら「よし、もし次の2年間で南極に行けなかったら、俺たちの使命は失敗だな」なんてことは言ってなかっただろうね。


− Billboard
あなたはナップスターとデジタル著作権の侵害について声を上げて反対していました。そして周知の通り、2006年になってiTunesと他のデジタス配信サービスに楽曲を提供しました。しかし、アーティストたちがTidal、Spotify、そして今、Apple Musicと提携を進めていくなか、あなたはデジタル音楽の展望にどう臨んでいるのですか?

− ラーズ・ウルリッヒ
人生においてあらゆることに「YES」と答える必要は必ずしもない。明らかにアップルの場合は、他のものより大きいブランドであり大きい会社だ。とてもスマートな人たちが運営している。だから俺たちは何も頭を悩ますようなことはなかった。個人的にも37個のアップル製品を持っている。それは俺だけで、家族の分を数に入れずにね。だから俺にとってかなり扱いやすいものなんだ。ダニエル・エクとSpotifyとの関係は数年間続いている。その関係はとても実りがあったよ。彼はとてもスマートガイで俺たちの楽曲を取得した。俺たちは一番スマートな人たちと提携しようとしているんだ。そういう人たちが運営する会社にについては多くのことを伝えられるよ。ダニエルについては、音楽にとても情熱的だったから、彼と一緒で心強かったね。エディー・キューやアップルで音楽に携わってる人たちについてもそうだ。彼らはアーティストたちや楽曲などにとても情熱的なんだ。だから安心する関係にいると感じる。その他の企業では少し慎重に取り扱うかもしれない。俺たちは自分たちの身を真っ只中に置こうとする。俺たちは最初の矢尻の先端である必要は必ずしもない。同時に難しすぎてキツいことは好きじゃないんだ。俺たちは波に漂って海岸に着くのさ。

Billboard(2015-06-22)

ラーズが引き合いに出していた、衝撃的な長期リフレッシュ休暇を取った俳優ダニエル・デイ=ルイスについてはこちらをどうぞ。
http://matome.naver.jp/odai/2136514892122653201

The Pulse Of Radioで行われた別のインタビューでは、バンド結成35周年(2016年)で何かアニバーサリーを行う予定はないと明言したとのこと。

順番が前後しますが、Billboardのインタビュー前に行われたパネルディスカッションでのラーズの発言もBLABBERMOUTH.NETさんが抜粋文字起こししてくれたので、こちらも管理人拙訳でご紹介。

−20ものブランドからのコマーシャルの提示からひとつを受ける

ただ座って、たくさんのオプションが提示される。20あるうちの1つにYESって言うことなんだ。

タイミングもあるし、誰のブランドかってのもあるし、何をオファーしてきているのかってのもある。わかりやすく言えば、一緒にベッドを共にしたいかどうか?ほとんどの場合、NOでしょ。


−セルアウトと思われるようなスポンサー契約を断ってきた

俺はよくやってきたと思うよ。夜はよく寝て、俺たちは無傷の信頼性を保ってきたと思う。でも20年前とは違う状況にある。適応していかなきゃいけない。

−広告主についてどう思うか

広告宣伝で彼らの仕事をこなしている素晴らしい人がたくさんいると思うよ。彼らの情熱だし、人生における天職だよね。広告主を考慮したマニフェストみたいなものを持っているのかどうかは分からないけど。俺はこう思うんだ・・・。間違いなく、メタリカに関して言えば・・・音楽を作る時には、創造的なプロセスがあるわけだけど、それは本当に人間的要素だと思うんだ。創造的な何かをする時のように。そして誰かと共有したい人間的要素でエキサイトする何かをする時のように。金を欲しがる必要もない、目立とうとする必要もない・・・そこにあるのは基本的な、ほとんど子どもみたいなことなんだ・・・。子どもが絵を描く時、部屋にいる他の人に描いたものをただ見せたいと思うようなものだよ。だから創造的な人たちは創造的な努力を惜しまないし、ただ共有したいと思うし、それは広告主が入ってくるところとは全く違うレベルなんだ。「ブランド」とか「広告」とかそういう言葉をここ数日聞いて、週の残りも聞き続けるとなると、そういったものは一般的な言葉ではあるんだけど、間違いなくみんなに自分たちのものを届けたいと思うね。

BLABBERMOUTH.NET(2015-06-25)

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