メタリカの『...And Justice For All』のミキシングを担当したことでも知られる音楽プロデューサー、スティーブ・トンプソンがインタビューで『...And Justice For All』の制作秘話を明かしてくれました。

ちなみに彼はガンズ・アンド・ローゼズの『Appetite For Destruction』、コーンの『Follow The Leader』、サウンド・ガーデンの『A-Sides』といったアルバムも手がけたやり手の方です。インタビューは大長編につき、メタリカに関する部分だけ抜粋して管理人拙訳にてご紹介。

−1988年にメタリカの『...And Justice For All』の楽曲をミキシングしたのは、『Appetite For Destruction』を手がけたこととは全く別の経験だったんですか?

まぁ私がやりたかったこととラーズがやりたかったことが全く違っていて、ちょっと困ってしまったよ。私はメタリカが大好きだし、彼らのことはよく知っていた。私は「アイツらはクールだ」と言っていた。我々はオファーの電話を受けて、ニューヨーク北部のベアズヴィル・スタジオまで行った。彼らはその時、モンスターズ・オブ・ロックのツアーの最中だった。だから彼らがしたことは、物事を処理するためだけにこの日はこっち、この日はあっちとヘリコプターで飛ぶことだった。


−バンドは自分たちがどういうアルバムを作りたいか、どんなサウンドを望んでいるかわかっていましたか?

ラーズは自分のドラムに求めていた全てのサウンドやパラメーターを正確にわかっていた。だから彼はクラーク・テクニックのEQ(パラメーターのイコライザー)を設定した写真を実際に持ってきたんだ。ドラムを望んだ音にするために、彼には決まったやり方があったってことだね。私は言ったよ。「マイケル(※訳注:マイケル・バービエーロ、スティーブ・トンプソンと共にミキシングを担当)、せっかくだからラーズと一緒に彼が求めているドラム・サウンドを出してみたらどうだい?彼が満足したら電話して私を呼んでくれ。」とね。


−あなたが最終的にあのアルバムを聴いた時、どう思いましたか?

彼らは私を呼び入れて、楽曲を聴いた。私はこう思った。「コイツはひどいサウンドだな」と。私は部屋の外のみんなを追いかけて、ドラム・サウンドを設計し直し、ギターの音量を上げた。ジェイソンはベースをよくやっていた。ヘットフィールドのギターとの絶妙な組み合わせだったんだ。


(中略)

−ジェイムズはあなたがやったことに満足していましたか?

私は全ての音を上げてみた。全てをそんな感じにしたら、ヘットフィールドは親指を立てて同意してくれた。ラーズが数分後にやってきて、それに何分か耳を傾けると「あれは消してくれ」とこうさ。私は「何が問題なんだ?」と問うと、彼は「俺のドラム・サウンドに何が起きたんだ?」と言ったんだ。私は「本気なのか?」とかそんなようなことを言ったよ。


−ラーズは満足していなかったということですか?

我々は彼が持っていたやり方でドラム・サウンドを強くしなければならなかった。私はそういうサウンドのファンではなかったが。そこで彼は「ベースギターはどうだい?」とこうさ。私は「あぁすごいパートだよ。彼はよくやっている。」と答えた。すると彼はこう言うんだ。「ミキシングで出来る限り、聴こえないくらいベースを小さくして欲しいんだ。」私は言ったよ、「冗談だろ?」って。


−彼は冗談ではなかったということですか?

彼は「いいや、小さくしてくれ」と言っていた。私があのレベルまで音を下げると彼は「もう5db落としてみようか。」と言ったんだ。私は振り返って、ヘットフィールドを見て言ったんだ。「彼は正気かい?」あれにはぶっ飛んだね。


−あなたはどうしたのですか?

私はその夜、私のマネージャーを呼んで、(メタリカのマネージャーである)クリフ・バーンスタインとピーター・メンチに話したんだっけな。「アイツらのことは大好きだ。彼らを素晴らしいと思うし、彼ら自身のジャンルを創り上げてきたと思う。でもラーズが引っ張ろうとしている方向には同意できない。私の名前がそこに載るんだ。他の誰かがそれをみつけたらどうなる?」私のマネージャーはそのことについてもバーンスタインやメンチについても何の関わりも持っていなかった。


−でもメタリカのミキシングから身を引く準備もできたのでは?

彼らは私に現場にいてくれるよう話した。私の唯一の後悔は、少なくとも我々が聴いたやり方でミキシングをする充分な時間を取れなかったということだけだ。私は『Master of Puppets』を吹き飛ばすようなものを作りたかった。それが『...And Justice For All』の音楽の方向性だった。その全てが盛り込まれていたが、彼らはベース無しでよりガレージで出すようなタイプのサウンドを探していたように思う。ベースは素晴らしかった。完璧だ。思い出すよ、メタリカがロックの殿堂に選ばれた時に、我々は招待されて、私はラーズと席を共にしたんだ。

−彼とは話したのですか?

彼はこうさ。「ねぇ、『...Justice』のベース、あれは一体何が起きたんだい?」彼は実際にそう俺に尋ねてきたんだ。私はすぐそこで彼をぶん殴ってやりたかったよ。残念だった。私は、あのベースのためにコテンパンに叩かれた一人だったからね。

Ultimate-Guitar.com(2015-03-20)

わざわざ自分で調整したイコライザーのつまみの写真まで持ってきて自分のドラム・サウンドにこだわっていたラーズですが、レコーディング当時の写真をみた限りではそんな葛藤が両者にあったとはわかりませんでした。(スティーブ・トンプソンの目が笑ってないっちゃ、笑ってないですが・・・)

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(左から)スティーブ・トンプソン、ジェイムズ・ヘットフィールド、マイケル・バービエーロ、ラーズ・ウルリッヒ

スティーブ・トンプソンのサイトでこの写真の他、『...And Justice For All』のレコーディング当時の写真やメタリカのロックの殿堂の際に写した写真、仕事を共にしたメタリカ以外のアーティストとの写真などが掲載されています。
http://stevethompsonproductions.com/photo-gallery/

※翻訳を一部修正しました。ご指摘ありがとうございました。

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