ロックの殿堂が『Ride the Lightning』『Master of Puppets』『...And Justice For All』のレコーディングに関わったサウンド・エンジニア/プロデューサー、フレミング・ラスムッセンにメタリカとのレコーディングについてインタビューを行いました。以前ご紹介した『Ride the Lightning』30周年を記念したRollingStoneのインタビューの補足的内容となっています。管理人拙訳にて。

メタリカとともに初期のアルバム『Ride the Lightning』『Master of Puppets』『...And Justice For All』をレコーディングしたとき、スタジオではどうだったのだろうか?プロデューサー、フレミング・ラスムッセンは知っている。1984年にジェイムズ・ヘットフィールド、ラーズ・ウルリッヒ、カーク・ハメット、クリフ・バートンに指名され、ラスムッセンはメタリカの2ndアルバム『Ride the Lightning』をプロデュースするために雇われた。1983年のデビューアルバム『Kill 'Em All』に続く、(今や)スラッシュのクラシックとなったアルバムは、メタリカとラスムッセンを結びつけたデンマークのコペンハーゲンにある「Sweet Silence Studios」へとバンドを呼び寄せた。

『Ride the Lightning』30周年にちなみ、フレミング・ラスムッセンはオハイオ州クリーブランドのロックの殿堂を訪れた。(中略)そして、2009年にメタリカがロックの殿堂入りを果たした3つの独創性に富んだヘヴィメタルアルバムのレコーディング、「For Whom the Bell Tolls」「Master of Puppets」各曲のレコーディング、そして彼がメタリカでベストと思うレコーディングについて語ってくれた。


−まずどのようにしてメタリカと仕事をし始めることになったんでしょうか?

まずメタリカに起きたことは、『Kill 'Em All』を小さな独立レーベルのもと、ニューヨークでレコーディングしたということだった。彼らはヨーロッパでレコーディングスタジオを探していた。(当時は)とてもドル高で、アメリカ本国のレコーディングと費用を比較したら、ヨーロッパでは2倍の時間はスタジオを使えるということがわかったからだ。だから彼らはそうした。彼らはたくさんのアルバムを聴いていたよ。いいエンジニアがいるスタジオを望んでいたし、違うスタジオだとどう聴こえるか聴いてみたかったようだ。そして彼らは私がリッチー・ブラックモアとレコーディングしたアルバム、おそらくレインボーの『Difficult to Cure(邦題:アイ・サレンダー)』に目をつけた。そして実際に私に連絡を取ったんだ。私はバンドの名前をそれまで聞いたことがなかった。ラーズはデンマーク出身だったから、彼にとっては帰郷して友人や家族に挨拶しに行くいい機会になった。それが実際起きたことだよ。


−『Ride the Lightning』収録曲の「For Whom the Bell Tolls」のレコーディングについて教えてください。

あれはちょっと特別なんだ。『Ride the Lightning』レコーディングのためにコペンハーゲン入りした時、まったく書かれていなかった唯一の曲だったからね。夜にレコーディングしたんだけど、冬だったし寒くてね。ラーズは大きな倉庫部屋にいて、大きなところで鳴る音を得ようとしていた。だから私たちはガスヒーターをそこに持って行った。しかし実際に曲を書くのはスタジオのなかだ。(今となっては)私には全くわからないのだが、私の記憶では彼らはスタジオであの曲を書いていたはずだ。あの曲はメタリカと初めてレコーディングした曲で、きっちりリズムに合わせてレコーディングした曲なんだ。私はあの曲をタイトにしたかったからね。



−タイトルトラックとなった「Master of Puppets」のレコーディングはどうでしたか?

あの曲は壮大だった。本当にいい曲だ。レコードのなかでも珠玉の1曲だよ・・・。あの曲は、すごく良く書かれた曲だったし、各パートが非常にうまく繋がっていたから、あまり苦労しなかったと思う。あの曲のセッションは実際、観てて満面の笑みだったよ。私たちはポジティヴなエネルギーを持った。「これは私たちがやったなかでもベストなアルバムになるぞ。これは何もかも吹き飛ばすだろうし、みんな図抜けてる!」と思った。本当に本当に良いアルバムだよ。


−『...And Justice For All』のレコーディングのあいだスタジオはどうでしたか?

Justiceは難しかった。それくらい複雑なパートがあったからね。私が思うに、メタリカを何かやるってことは、いつもバーを非常に高く設定されるんだ。あの当時、彼らは今ほど演奏スキルはなかった。でもパフォーマンス・レベルを上げたいと彼らは思っていたから、難しいことと言えば時間がかかったってことだけ。うまくできるまで、何回も何回も没頭してやっていたよ・・・。基本的に彼らはバーをとても高く設定していたから、時間がかかったんだ。『...And Justice For All』全曲でドラム・トラックは2つずつあった。ちょっと難しくて、変わっていたね。全てのパートのなかで一番難しいと思ったのは「One」のマシンガン・パートだね。あれは一発録りだったんだ。ラーズはあれをモノにしたんだ。


−(一緒に仕事をして)最も誇らしいお気に入りのメタリカのレコーディングはありますか?

たぶん『Master Of Puppets』の「Sanitarium」だろうと思う。あの曲はMono-Stereoでやったんだ。私はそういうのに弱くてね。ヘッドフォンで聴いたら「一体どうなってるんだ?」ってなるよ・・・。そういう曲はたくさんある。(関わった)3つのアルバムには本当に誇らしい曲がたくさんある。おそらく我々が初めて本当にメタリカ・サウンドをモノにした曲は「Creeping Death」だと思う。壮大と言うべきものだ。それにとてもいい曲だとも思う。もちろんそうなるようにやってきたんだが。

私たちはみんな、自分たちがやっていることで成功してやるんだという気持ちを持っていた。音楽史を変えるつもりだった。始まりからあれはそういうプロジェクトだったと思う。そして、ご存知の通り、そう考えた私たちは自分たちのやり方で進み、とんでもなくデカいエネルギーを持ち、そういったものがバンドのトレードマークになった。彼らはMTVで自分たちのビデオが放送されるのに頼りたがらなかった。ビデオは全く制作しなかった。彼らはそんなこと気にしなかったし、彼らにとって重要なことじゃなかったからだ。メタリカといるっていうのはいつもそういうことだったんだ。


RockHall.com(2014-08-05)

有名なスタジオでもドル高のおかげで安く使えたわけですね。そして以前紹介したインタビューのなかで語られていたラーズがガスヒーターを独り占めしていた理由がようやくわかりました(笑)

MetallicaMOPStudio
『Master of Puppets』レコーディング当時のメタリカ

カナダ公演を終え、「By Request」ツアーをひとまず終了したメタリカ。これから新譜制作へと集中していくのでしょうか。

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