先日行われたOrionフェスでもブラック・アルバムの完全再現を行ったメタリカ。(すでにLiveMetallicaで2日分の音源が販売開始されました。)

そんななか、The Village Voiceのサイトでジェイムズとカークがブラック・アルバムを振り返るインタビューを掲載。いつもの管理人拙訳、誤訳御免でどうぞ。

james_kirk

The Village Voice
「Nothing Else Matters」はバンドにとって大きな出発となりました。スラッシュ・メタルを期待したファンをイライラさせましたが、いまだにほとんどいつものショーで演奏されています。

ジェイムズ
まったくもってクレイジーだね。あれは俺が思うに最もメタリカっぽくない、俺たちによって演奏されそうにない曲だったよ。誰もが本当に聴きたい曲として最後の最後に挙げるようなね。俺が家から離れて放浪してたとき、ツアーで自分の部屋にいる俺自身への曲だったんだ。驚いたね。正直に自分をさらけ出せた。本当の自分を表に出し、リスクを負って、誰かが俺の心をスパイクで踏みにじることになるか、それとも自分たちの心を寄り添わせることになるか、賭けをした真の証だよ。やってみなければ決してわからないね。事が結実して、俺たちは正しいことをしたと思うよ。感じたことを心から書いてね。そうすれば間違えることはない。ニューヨーク・ヘルズ・エンジェルズが映画に使ってから、スポーツ選手が、結婚する人が、ありとあらゆる人々があの曲と自分たちを結びつけて、信じられないようなライヴの曲になった。俺に否応なく(映画を繰り返し観ることで)テープ・プレーヤーを消耗させ、あの曲をメタリカたらしめた彼らには感謝しているよ。

The Village Voice
『A Year and a Half in the Life of Metallica』のなかで、あなたが「Nothing Else Matters」を覚えるのに苦労したために、ライヴでのお披露目が遅れたというジョークが出てきました。今振り返ってあなたにとってそれは面白いことですか?

カーク
セットリストにあの曲を入れ続けてきたし、実際にできるようになると思えるまではセットリストからは外してきた。俺はステージ上で自分でその全てのイントロ部分を再び覚えなければならなかった。そうなったときはちょっと怖かったね。俺たちはそんな風に始めた曲なんてなかったからね。しばらくして、いったん要領がわかれば、何の問題もなかったけどね。いったん曲を形作って、一緒に演奏の準備をすることに焦点を当てれば、俺たちは曲をしっかりまとめて実際にやることに関してはかなり得意なんだよ。

The Village Voice
2つの続編を作ることを決定付けた「The Unforgiven」のテーマについて、何がそれほどあなたを捉えて離さないのでしょうか?

ジェイムズ
普通はそういう(続編を作るような)ことはしないものなのかもしれない。俺は許されると感じなかったのかもしれないし、あるいは、許すことができなかったからかもしれない。俺にとってあの曲のひとつはとても個人的なことで、世界と自身、そして向き合うには少々苛立つようなことを許すことを中心に展開している。メロディ自体は頭のなかから離れることがなかった。俺にとっては強力だったし、リリカルで、メロディがメロディを呼んだ。おそらく3部作か何かをすることになってなくても、次のアルバムで同じことを書くことになってなくてもね。「The Unforgiven III」を書いた後、考えたね。俺たちはこの曲によってなされたんじゃないかってね。つまり俺は許すことができ、俺自身も許すようになっていったんだよ。


The Village Voice
「The God That Failed」は、クリスチャン・サイエンスの躾を受け、あなたの母が医学による治療を拒んだ後に迎えた死について食ってかかる非常に個人的な曲です。今、この曲を歌うことで、あなたは(この曲を作った当時に抱いていたような)元にいた同じところまで連れ戻されますか?

ジェイムズ
俺が望むところまでは連れ戻されるかな。俺がされてきた(宗教的価値観から行われる)躾や宗教、その他もろもろとは和解したんだ。なぜそうなってしまったのか、どうすればならなかったのか、今はわかっている。そしてそういったもの全てに折り合いがついたんだ。俺があの曲を書いたとき、そういった子供の頃の嫌なことに起因する、周りとあまりにも違うことに対して憎悪の真っ只中にあった。神の力とは一体何なのか、俺にはわかっている。そして神の力に対する俺の両親の考えが一体何なのか、今の俺にはわかっているんだ。だから、俺は彼らのものを彼らに預けて、主張する必要があるところを自分のものとして取り出すことができる。そこから前に進むことができたんだ。そういった意味ではあの曲はかなりヘヴィだよ。

The Village Voice
"the healing hand held back by the deepened nail"というフレーズはかなり誇らしく思っていたのではと思うんですが。

ジェイムズ
「ついにたどり着いたぞ。道を譲れ、ボブ・ディラン」ってか。誰かに怒っていたところからはかなり成長したように聞こえるよな。

The Village Voice
『A Year and a Half in the Life of Metallica』で、(プロデューサーの)ボブ・ロックが1stシングルに「Enter Sandman」ではなく、「Holier Than Thou」にすべきだと説得しようとするシーンがあります。

ジェイムズ
あぁそうだな。おそらく俺たちはみんな、シングルがどうあるべきか違う意見を持っていたと思う。そしてアルバムを強力なものにしたから、どの曲もその可能性はあった。「Holier Than Thou」は俺たちがいまだにライヴでやっているし、みんなが楽しんでくれる曲のひとつでもある。複雑かつシンプルな曲だね。

The Village Voice
「My Friend of Misery」はブラック・アルバムのツアーで初めて演奏された曲のひとつです。私は常々、レコードのなかで長大なベース・ソロとツイン・リード・ギターのソロのある傑出した曲だと思っています。

ジェイムズ
最高だね。俺はあの曲が大好きなんだ。本当に雰囲気のある曲だよ。あの曲は当初、インスト曲だったんだ。なぜそうなったかわからないけど、俺がヴォーカルを足したら、もうひとつ別のレベルにあの曲を持っていくことができた。ツイン・ソロみたいのもクールだよね。カークと俺であんなことをやってとても良かったよ。あれは決して速いソロじゃなく、クレイジーなハーモニーによって、これまでよりメロディックな、俺が貢献できたソロだね。ああいうのはいいね。

The Village Voice
あのアルバムで、建国の父について言及されています。つまり、「My Friend of Misery」ではトーマス・ペイン、「Don't Tread on Me」ではパトリック・ヘンリーを。当時、アメリカの歴史の本を読んでいたんですか?

ジェイムズ
いいや。そうするつもりじゃなかったんだ。「Don't Tread on Me」は俺が好きな曲だけど、多くの人にショックを与えたよ。俺たちのことを反戦論者だと思っていたときに、みんな、あの曲を戦争肯定と捉えたからね。俺たちは曲を書いただけさ。俺たちは政治的にはどの立場もとっていない。「Don't Tread On Me」は「Don't fuck with us(俺たちをなめんじゃねぇ)」って曲のひとつにすぎない。明らかに旗とヘビ、そしてそれが意味するところを参照して、アルバムを全てブラックに染めてヘビのアイコンを配したアルバムカバーとなった。あの曲をライヴでやるのは素晴らしいと思うよ。俺たちがこうしてやってきたヨーロッパであの曲を演奏しても、みんな(アメリカ独立に関連が深いと捉えて)愕然とはしないしね。とはいえ、俺たちはまだイランやイラクではあの曲をやってはいないけど。

The Village Voice
9.11直後はたくさんの車の中から「Don't Tread On Me」が鳴り響くのを聴きました。

ジェイムズ
それが人の助けになるんなら、それこそが俺が曲から受け取ったものなんだよ。もしあの曲で力を与えられたんなら、それこそが俺たちの曲がそうなればいいと思っていることなんだ。

カーク
俺から言えることは、あの曲はそれほどお気に入りじゃなかったんだよ。みんな、間違いなくあの曲の関連を考えるし、間違いなく特定の政治的なシナリオもしくは戦争のシナリオか何かと結びつけるからね。俺たちの音楽は解釈自由だから。俺たちは「それはあれを意味しています。それはあれを意味していません。そういう結論じゃなく、こういう結論が導き出されます。」なんて言うつもりないからさ。俺たちの音楽は基本的には解釈でもって漠然と把握されるようなものだからね。それがひとつの曲にみんなが夢中になって、曲に思い入れが加わるってことだから。あの曲は本当に「なめんじゃねぇぞ」って気持ちがよく出ているね。

The Village Voice
ショーの前にセットリストを見て、「Enter Sandman」の文字を見て、「マジで今夜はやめとこうよ。」と言ったことはありますか?

カーク
俺たちがやらなくちゃならないとわかっている曲はたくさんある。観衆はそういう曲をやるのを期待しているからね。俺たちがセットリストに投げ込む曲は、俺たちが演奏したい、もしくはリクエストを受けたからなんだよ。俺たちの音楽の素晴らしいところは、本当に演奏することが楽しいってことと、たとえ俺たちが曲のパートを変えたいとか、加えたいとか、差し引きたいってなっても、なんとかできるぐらい十二分にダイナミックだってことだね。曲を始めてちょっと退屈になったとき、俺たちは曲を変化させるんだ。パーツを足したり引いたり、あるいはもっとダイナミックにしたりしてね。それが全ての退屈な要因に打ち勝つ方法なんだ。いいアプローチだと思うし、称賛すべきアプローチだと思うよ。「Seek and Destroy」について語るのには閉口したときもかつてはあった。でも俺たちはよりヘヴィなキーで演奏し始めた、そして今や俺にとってはまったく新しい曲のように聴こえるんだ。6、7年前に変えてから、俺はまたあの曲をいたるところくまなく好きになったよ。

The Village Voice
『Live Shit』で、あなたがたは「Seek and Destroy」をほぼ20分に渡り演奏していますよ。

カーク
もうそんなことをしていないことを神に感謝だな。

The Village Voice(2012-06-22)

メタリカでも同じ楽曲をやっているとマンネリってあるんだなぁとか思いました。
メンバー本人からこういうことを聴くのは新鮮かも。

ジェイムズの歌詞の話は関連記事とあわせて読むとまた一段と興味深いです。歌詞解釈論、全然手がつけられないな。。。

year
A Year and a Half in the Life of Metallica


liveshit
Live Shit: Binge & Purge


ブログランキングに参加しています。
応援クリックをヨロシクお願いします。

関連記事
ブラック・アルバム発売20周年を記念し、プロデューサーのボブ・ロックが解説。
プロデューサー、ボブ・ロックによるブラック・アルバム全曲解説(その1)
プロデューサー、ボブ・ロックによるブラック・アルバム全曲解説(その2)
プロデューサー、ボブ・ロックによるブラック・アルバム全曲解説(その3)
メタリカ、ブラックアルバム20周年を振り返る(まとめ)
メタリカ表紙のRollingStone誌のBIG ISSUE(ジェイムズ・ヘットフィールド編)
メタリカ表紙のRollingStone誌のBIG ISSUE(カーク・ハメット編)