今年のグラミー賞はホイットニー・ヒューストンの訃報とアデルの6部門受賞が話題になりましたが、1989年に物議を醸したあのグラミー賞のお話から。

この年、新設されたグラミーの「Hard Rock/Metal Performance」部門。大方の予想がメタリカだったこの賞を受賞したのは、“大穴”ジェスロ・タルでした。ギター、ベース、ドラムスに加え、フルートを用いたプログレッシヴ・ロック・バンドとも言える彼らがなぜHR/HMなのだと話題になりました。

2012年のグラミー賞に先がけ、またこの話を本人に蒸し返すというタブー知らずな記者によるジェスロ・タルのリーダー、イアン・アンダーソンのインタビューをどうぞ。

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イアン・アンダーソン

「私は(イングランドの自宅にいるより)アメリカのライターと話していて、この手の質問を訊かれた時間の方がずっと多いね。」
とイアン・アンダーソンは語る。

「こっち(イングランド)じゃ本当に大したことじゃないんだ。あの年はスラッシュ「メタル」に先駆けてハードロックのために新たに設けられたカテゴリーだった。そしてこのカテゴリーは今日もまだ存在するわけだが、、我々がどういうわけかノミネートされた。あのとき、我々がノミネートされたという事実に誰も注目なんてしていなかった。誰も一瞥もくれなかった。ジェスロ・タルが賞を獲るなどありえないと思われていたからだ。イギー・ポップでもない、ジェーンズ・アディクションでもない。メタリカが獲ると思われていた。なぜなら彼らはあの年、大成功を収め、かつてない、まさに従来の常識を打ち破り、才能をヒットさせたからだ。それにみんなメタリカがグラミー賞を獲るのを楽しみにしていた。彼ら自身もね。」

「そしてジェスロ・タルが呼ばれたとき、多くのブーイングや野次、不信のため息が浴びせられた。投票権を持つナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンスの6000人もの会員がヘヴィ・ロック・バンドあるいはヘヴィ・メタル・バンドとしてジェスロ・タルに票を入れるなんて思いたくなかった。彼らは我々に賞を与えたんだ。我々がナイスガイの集まりで、それまでグラミー賞を獲ったことがなかったからね。さらに悲しいのは、これだけ年月が過ぎても、ベスト片足フルート奏者ってカテゴリーがいまだにないことだよ。(※訳注:彼の片足立ちのフルート奏法は狂気のフラミンゴとも呼ばれた。)そうなれば、私は毎年グラミー賞を獲っているさ。」

「あのときも言ったけど、メタリカはエキサイティングな新しいバンドだった。そして彼らが翌年のグラミーを勝ち取るのは確実だとね。そして彼らは実際そうなった。そしてヘヴィ・メタル・バンドにもユーモアセンスがあることを証明するために、グラミー賞を獲得したとき彼らはビルボードで全紙広告を出した。“プロデューサー、レコード会社、お母さん、お父さん、兄弟、飼い犬、そしてジェスロ・タルがその年に新譜を出さなかったことに感謝”とね。」


Powerline(2012-02-11)

毎度、こんなこと訊かれる彼らもなんとも気の毒だなぁ。
あのとき、そして今、グラミー受賞に対してどう思っているのか?というのは関心事ではありますが。今回のタイミングでこのインタビューが人目に触れるようになれば訊かれることも減っていくのかも。

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